アンチを呼ばなくても
【1月7日】
年末特番で印象に残ったのは、
『こやぶるSPORTS大晦日SP』(関西テレビ)のSHINJO発言である。
「アンチ大好きです、ボク」
そのワケを聞いてうなった。
「アンチ、来い!と。アンチの方が来ますよね。そうすると、なるほど!って思うんです。ボクは自分の欠点ってアンチの方がいないと分からないんですよ」
20年ほど前、米国でメジャーリーガー新庄剛志を取材した。当時新庄といえば、デイリースポーツ1面の常連。関西メディアで連日騒がれるのは「ストレスだった」と振り返る彼だけど、最近の発言を聞いていると、近くで追った当時より世界観がよく分かる。ワールドシリーズまで経験した男がその後、波瀾万丈の人生を送ってきたのだから、人生観が変わったとしても不思議じゃないけれど…。
新庄は「『あぁこういうふうに思ってる人がいるんだ』と見た後すぐブロック!削除します」と、MC小籔千豊を笑わせていたが、これって、なかなか修行が要ること。誰だって「アンチ自分」のコメントは煙たい。目を背けたい。それでも直視できる寛容さ、気丈さ…僕がその立場ならと考えるととても「大好き」なんて言える自信はない…いやぁ、ないな。
とはいえ、欠点を知ることは、どんな世界、どんな立場でも、キャリアアップに不可欠であることはいうまでもない。
1年前、個人的に大山悠輔から聞いた言葉を当欄で記した。
「人間なので、そういった(辛辣な)言葉は少なからず耳にも目にも入ってきます。難しさはありますけど、誰も文句をつけられないような成績を残せばいい。そういう気持ちを持ってやりますよ」
その結果(成績)はご存じの通り。新庄は「(アンチの)君達のおかげで闘争心が出てクリアできたよ」と語っていたが、大山もそれに似た気概で戦ってきたのか。
だからといって辛辣なコメントをどんどん大山へ…なんてまさか書くつもりはない。中傷を「げきれい」と読む者はいないのだ。
名が売れれば、アンチの声は膨らむもの。福留孝介は僕に「一切見ないですよ」と話していたが、それもひとつ。新庄スタイルを採(と)らないなら、自分の体内にアンチを作っておくのもいい。
お前、どやねん。おかしない?空から自分を眺める。俯瞰する。そんな作業が日常になれば、アンチの指摘がなくとも、欠点を知れる?なんて考えてみたり。
欠点というか、落第点というか新年早々自戒を込めて…。前回の当欄で阪神球団の年賀式は「密」と書いた。が、これはあくまで昨年までの話で言葉足らず。「密だった」と書くのが正解で、今年の会場は広い室内練習場。感染対策は施されていた。球団から指摘はなかったけれど、差し替えたい。
関東で緊急事態宣言が再発令されたこの日は「七草」。無病息災を祈る節句に、アンチの声も、誤解を招く筆も要らない。
岩田、がんばれ。
早く良くなれ…。=敬称略=