記者と仲良くしろ?
【1月16日】
この仕事をしていると、知人からよく「○○選手に会ったことあるの?」って聞かれる。この○○に当てはまる人物で最も多いのがイチローである。やはり、プロ野球界の象徴…なのだろう。
オリックス時代の優勝に立ち合った。マリナーズ入団会見を取材した。そう言えば、「へぇ」「すげぇ」などといわれるけれど、いえ、いえ、それだけだから。かつて、WBCでイチローとチームメートだった新井貴浩から「イチエピ」を耳にしたことがあるくらいで、本人とサシで喋ったこともなければ、面識すらない。だから、イチローをあれこれ語る資格のないライター…なんだけど、ずっと興味はある。鬼才の思想、哲学について、できることなら、現役時代に直球で取材してみたかった。
きょうは、なぜ「イチロー」を書くのか。実は、デイリースポーツ社長の改発博明が「イチローの肉声」を伝えてくれたから。
昨年末、イチローが記念講演を行った新聞大会に出席した改発から、「イチローのこと」との標題でメールをもらった。
興味深かったのは、イチローが語った「メディアとの関係性」。
「(オリックス時代)先輩からは『記者と仲良くしろ』と言われて、見ていたら、確かに仲は良いけど、なれ合い。高めあう仲ではない。だから、私はメディアとは緊張感を持って切磋琢磨して互いを高め合う関係を心掛けた。担当記者は大変だったと思う」-。
講演でそんな趣旨の発言があったという。
選手と記者の関係は確かに難しさがあるのだけど、「イチローの考え」には大いに賛同する。
私事だけど、トラ番時代は金本知憲や新井貴浩に比較的〈近い〉記者だった。が、金本からの言葉で一番嬉しかったのは、「皆さん知らないと思いますが、風は何度も俺を怒らせましたからね」-。
あれは、12年。メディアが主催した「金本のお別れ(引退)食事会」で、主役からそう言われ、互いに笑ったけれど、その通り。
おかげで、野球のこと、それ以外にも大切なこと…金本に高めてもらったことは多い。
特に敗戦後の金本を取材するのは緊張感があった。見当外れの質問は相手にしない。そんなスタンスの金本だから、各社のアニキ番は、イチローの語るように「大変だった」はず。それでも、今思えばその大変さが楽しくもあった。
矢野燿大の現役時代もそう。試合後、矢野にぶらさがる(歩きながら話を聞く)のは、いつも緊張した。けれど、そういう選手だから勉強させてもらったし、質問ひとつに頭も神経も使った。
嗚呼、沖縄で自主トレ中の大山悠輔を取材したかった。沖縄で能見篤史に会いたかった。選手との緊張関係が好きだから、それを遮るウイルスが憎い。
それにしても、半月後にせまったキャンプはどうなるのか。もう何ヶ月間も矢野にじっくり話を聞けていない。緊張感のある取材を再開できる日が待ち遠しい。=敬称略=