2番を譲り一番を狙う

 【2月7日】

 宜野座を離れ、名護方面へレンタカーを走らせる。外気温計は24度。陽光にキラキラ反射する東シナ海を眺め、国道58号線を北上する。馴染みのバーガーショップでテークアウトしてホテルへ…。

 昼メシがコンビニのチーズケーキだけじゃ腹減って仕事にならない。そんなときは決まってあの店やん…って、おい、ここもCLOSEDかよ。「緊急事態宣言により、当面の間…」。もう、見飽きたぜ…。

 大好きな沖縄が、沖縄の姿を奪われた春である。言うてもしゃあない…そう言い聞かせながら、いつもより高音で腹をグーグー鳴らし、またコンビニへ向かう。

 透き通る海だけがウチナーの魅力じゃない。この村、この人に魅せられた者にとっちゃ、やるせない一カ月…。そういえば、昨年、ブランド総合研究所が全国の消費者約1万人を対象にアンケートを実施、「コロナ後に行きたい都道府県ランキング」を公表してたっけ。1位は北海道、じゃ、2位は…。年に2度、公私で沖縄へ赴く僕にとって、沖縄は2位じゃないのよ。コロナ後に行きたい、ダントツが沖縄なんですよ…。

 日本で一番高い山は?

 日本で一番大きい湖は?

 じゃ、2位は?

 みんな、2位は知らないです。1位にならないと意味がない-。

 宜野座で「1日主将」に指名された藤浪晋太郎が練習前の円陣でチームへ投げかけたスピーチである。実はこの話、僕は晋太郎から直に聞いたことがあった。確か、2年前の沖縄…。あの夜、あぐー鍋をつつきながら大阪桐蔭時代の話を振ってみると、晋太郎は同校監督・西谷浩一から「教わり、大切にしている言葉」を教えてくれた。春夏連覇の原動力に富士山と琵琶湖の余話があったのだ、と。

 そう。確かに2位は記憶に残りにくい。だけど、それでも多くの野球ファンの心に刻まれる2位も実はある。同じくこの日「1日主将」に指名された北條史也は、富士山と琵琶湖の逸話をどんなふうに聞いただろうか。

 ご存じの通り、北條といえば、光星学院3年時の12年、春夏とも藤浪擁する大阪桐蔭に決勝で敗れ2年夏から3季連続で甲子園準優勝を経験している。きっと、晋太郎以上に「一番にならないと…」の思いが強い男なのだ。

 前回(4日)の紅白戦は一塁で出場し、この日は二塁スタメン。立場がこうなった以上どこでもやる…当然そうなんだけど、個人的には、北條にはまだまだ〈本職〉を奪いにかかってほしい。

 紅白戦の前、北條のフリー打撃を見てみた。苦しんでいるように映る。「あぁ、くっそー」。その悔しさが無観客のネット裏まで響く。ときにケージを出ない打ち損じ。どん詰まりの飛球。ボテボテのゴロ。カーン、カーンと心地よく奏でる姿はそこにない。でもだからこそ、伝わってくる。何かを変えたい…「2番」を譲った北條に「一番」を狙う執念を感じる。またそうなってこそ願ってもない相乗効果が生まれる。=敬称略=

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