女性登用の設定はない

 【2月18日】

 那覇のコンビニで週刊文春を買った。代議士のラウンジ通いを読みたかったわけではない。南場智子の記事が載っていると聞いたので手に取った。プロ野球ファンなら、この人の名を知るだろう。

 「なんば・ともこ」は株式会社ディー・エヌ・エー創業者でありDeNAベイスターズのオーナーである。女性初の日本プロ野球オーナー会議議長に就いたことで更にその名が世に広まったわけだけど、今回の文春記事はDeNAが今月9日に本社の新社長人事を発表したことに触れたもの。元総務官僚で現COOの岡村信悟を昇格させる南場の決断だったというが南場は「コロナ禍でのプロ野球活性化」へ共に頭を悩ませる中で、岡村への信頼を強くしたとある。

 DeNA監督の三浦大輔が阪神戦初采配をふるった日に思い出した。阪神球団本部長の谷本修が、南場という経営者の野球愛の〈起源〉について話していたことを。

 「亡くなられたご主人が野球に熱狂される姿を隣でご覧になって『何がこんなに人を熱狂させるのか…』とプロ野球に興味を持たれたと仰っていた記憶があります」

 16年冬に南場は最愛の夫・紺屋勝成を病気で亡くした。そのニュースを目にして以降、深いワケはなかったけれど、僕はこの人の発信、この人の哲学に興味を持ち、自然と目を向けるようになった。

 例の女性蔑視発言が取り沙汰される昨今だからこそ、女性トップランナー南場のリアリズム、実力主義が余計に胸を打つ。谷本は南場について「まさに経営者」と語るが、例えばこの発言もそう。

 「わが社(DeNA)では、女性管理職を何割つくるといった目標も設定しませんし、実力のない人に下駄を履かせて昇進させる気もありません」

 日本では女性議員、女性管理職の数が世界水準にない。だからもっと女性を…その意味は分かるし女性登用の意義も分かる一方で、我が国がそんな風潮だからウチも…なんて本来の「フェア精神」を失った経営に未来はない。「良い経営者というのは根本的に『愛』がありますよ」と谷本は言うが、まさにその通りで、フェアを装った経営に「愛」などなく、かえって女性蔑視。南場の方針こそ結果として経営を安定させ、組織を成長させることが実証されている。

 東京五輪組織委の後任会長候補に南場の名が挙がったともいわれるが、リアルなフェア精神を携える女性だから、オリンピズムにふさわしいリーダーだとも感じる。

 「予期せぬ壁が唐突に立ちはだかったとき、ダメージを受けて、『もうダメだ』と力が抜けてしまう人と、逆に『この問題を解決して次につなげよう』と闘志が湧いてくる人がいます。闘志を燃やせる人の共通点は、ネガティブな状況が生じた際に『ひと(誰が問題か)』ではなく、『こと(何が問題か)』に向き合う姿勢にある」

 この南場の言葉はきっとプロ野球にも通ずる。人のせいにすることなく、フェアに物事を捉えられれば、いま窮地に立つ選手も正しく闘志が湧くのだ。=敬称略=

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