It is what…
【2月21日】
宜野座の球場まわりを歩いていると、植木の隙間からキャンプを覗き見る少年に遭遇した。傍らに自転車…地元の子かな??と思いながら、無観客ならではの光景だったのでカメラでパシャリ。
その写真をTwitterに載せると、なんと、当人からダイレクトメール(DM)があった。
「この写真、僕でーす。和歌山から来ました、載せていただき、とても嬉しいです!」
聞けば、和歌山市加太(かだ)から阪神キャンプを「観に来た」高校生だという。
「昨年から飛行機とホテルを予約していたんですが、こんなご時世になって。でも、少しでも選手がプレーしているところを見たくて来ることにしました。僕の推しは、梅野隆太郎選手なんです」
宜野座キャンプは例年同様に警備員が配置され、観戦に訪れたファンに「無観客の事情」を説明する。それでも梅野を見たい。少しだけでいい…。そんな思いで敷地外から豆粒のような背番号2を眺め、手を振ってみると、心優しき梅ちゃんは手を振り返してくれたそう。この少年は「最高に嬉しかった…」のだとか。
ええ話いただきました…と思う一方、僕が知らないだけで少年と同じようなファンがほかにも宜野座を訪れているのだと思う。
コロナ禍だから……このフレーズはもう書き飽きたけど、プロ野球ファンに限らず、今までフツーに叶えてきた欲求を叶えられないストレスはもう、「それはそれ」と割り切るしかないのか…。
It is what it is!
=それはそれで仕方ない!
これは、全豪オープンを制した大坂なおみのコメントである。 準決勝で憧れのセリーナ・ウィリアムズに勝利した大坂は試合後の会見で、一度はセリーナに追いつかれたシーンを報道陣から問われると、こう返したのだ。
「彼女(セリーナ)は最高のサーブを打つ選手だから…頭の中で『それはそれよ!』って割り切ることにしたの」
なんでも一流は、このメンタルが大事であるとよく聞くけれど、これがなかなか難しい。
少年が推す梅野だって、一流になった今もそうだ。おととい本紙が掲載したインタビューでも、全く趣は違うけれど、そんなことを感じる梅野のコメントがあった。
「ケガでの離脱とかそういうのじゃないからこそ、悔しい思いが強くて…」
昨年開幕から先発捕手の併用が続いたことを問われ、プロとして当然の矜持を滲ませたわけだけど「起用法」は自分の力が及ばないもの。「それはそれ」と割り切るしかない…とはいえ、気持ちの整理が簡単じゃないのも分かるが。
この日、カープ戦で先発マスクを被った梅野が〈鬼肩〉を披露した。ストップ技術ももちろんそうだし、もう別格。3年連続G・G捕手は、その肩書きだけで敵軍に「It is what it is!」と思わせる存在だと僕は思っている。=敬称略=