要警戒の反発力

 【9月14日】

 財布に「審判員証明書」をしのばせている。シニアリーグの硬式野球協会関西連盟の審判講習会を受講し取得したものだ。それ以来プロ野球を見る目が変わった。審判を注視するようになったのだ。

 講習会でたたきこまれたのは、「自らのジャッジに説得力を持たせること」。際どいクロスプレーを判定する場合でも「私はここで見ていました」というアピールは必要であり、正確なポジショニングで自信をもって「アウト、セーフ」をコールして当該選手を納得させる。「審判さん、その位置じゃ今のタッグプレー見えなかったでしょ」。そんな疑念を抱かせないように-である。

 「審判のジャッジは絶対」とされた時代を長らく見てきた。しかし、NPB(日本野球機構)が、「ファンや選手、監督が満足できる公平な判定を目指すこと」を主唱し、18年シーズンから「リクエスト制度」を導入。判定に異議がある際、監督が映像による検証を要求できるようになったわけだ。

 ヤクルトの反発力を警戒しなければ…そんな懸念を抱かざるを得なかった誤審がおとといあった。中日の守備がどう。ヤクルトの三塁走者やベースコーチがどう。プロ野球OBらによってSNSでそんな議論も渦巻いたけれど、選手やコーチの判断に矛先を向けるのは本末転倒の事案である。

 バンテリンの三塁ベンチでヤクルトの将、高津臣吾が「もうええよ。明日頑張ろう」と怒りの選手をなだめ、本拠神宮に戻ってきたわけだけど、我々からすれば、審判サン、余計なことを…である。

 というのも…。

 神宮の誤審といえば、金本知憲政権の18年のそれが記憶に残る。6月末のヤクルト戦。同点で迎えた七回一死二塁で、ヤクルト荒木の三ゴロを処理した北條が二走藤井にタッチを試みたが、藤井は走路を外れ三塁へ。明らかにスリーフィートオーバーにみえたが、三塁塁審は「タッグ(=タッチ)行為はなかった」として、その後、阪神が決勝点を許した。

 「納得いかないし。終わったから済んだというものじゃない」

 金本は猛抗議したが、ジャッジが覆ることはなかった。セ・リーグ統括の杵渕和秀は「走者のラインアウトを取るべきだった。ほかの審判員との協議もするべきだった」とし、阪神側へ謝罪があったが、後の祭りである。

 思い出深いのはその後だ。阪神は同カードの2戦、3戦で打って打って連勝し、誤審への怒り、そして、反発力を見せつけた。その主役は、北條史也。誤審の〈被害者〉は2試合で9打数5安打4打点と暴れまくったのだ。

 おとといの誤審に怒りを隠さなかった村上宗隆がこの夜一発を含む4打数3安打。あぁヤバい。3年前の北條状態か…なんて肩をすくめて見守った雨中の神宮だったけれど、そんな反発力を跳ね返すチーム力が今季の猛虎にはあった。嗚呼、偉大なマルテよ…いや警戒はまだ必要である。きょう、もういっちょ跳ね返しておうちへ帰ろう。=敬称略=

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