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スピリットを感じた夜

 【9月21日】

 9月のナゴヤといえば、何年経っても思い出してしまう。いつまで言うてんの?と、お叱りを受けるかもだけど、記憶が甦るのだから、しょうがない。そう。9月のナゴヤといえば、15年前の…。

 矢野輝弘「全然どうしようもないというわけじゃなかったけど、

こっちも力んでしまった」

 藤本敦士「甘い球も何球かきたんですけど、捉え切れなかった」

 金本知憲「相手が良かった?どうやろな。よう分からん。まあ、明日も試合があるんやから」

 06年、9月16日…

 ナゴヤドームで山本昌にノーヒットノーランをくらった主力のコメントである。

 外せない家庭の事情でナゴヤへ行けなかった当方は、あの日、西宮の病院でテレビ観戦していた。

 まずい、これ、まずいな…。

 回を追うごとに、手にイヤな汗をかきながら、最後は放心。鬼門ナゴヤドームでシーズン10連敗を喫し…って、そんなイヤな記憶をえんえん書きたいわけじゃなく、「全員野球」で勝ったこんな夜はポジティブな思い出を掘り起こしてみたい。

 あの年、山本昌にやられたのは虎党も知っている。ところが、どうだろう。ノーヒットの翌日、阪神は踏ん張ったのか、ショックを引きずったのか、はっきり覚えている人はあまりいないのでは?

 ナゴヤでシーズン全敗なら球団史上初の屈辱だったが…

 22号2ランで決勝点をたたき出したのは、4番・金本だった。

 アニキはしかし「自分はもういい」と言った。そして「安藤がヒーロー。気持ちのこもった投球でスピリットを見せてもらった」とコメントを締めくくった。

 06年といえば、落合竜が優勝したシーズンである。阪神は優勝の翌年で岡田政権の3年目。連覇を逃したのは、やはり、ナゴヤドームで喫した「1勝10敗」の悪夢が招いた結果と言わざるを得ない。

 それでも、あの夜ばかりは、安藤優也(現2軍投手コーチ)が気迫で中日打線を翻弄し、矢野に投げ込む姿は僕らの胸を打った。金本は当時「スピリット」という言葉で安ちゃんを称えたのだが、秋になれば、もう、結局はそこなんだと思う。

 あれから15年。今も苦手なナゴヤで、2-0とリードしながら、同点に追いつかれ、最後は決勝犠飛の木浪曰く「全員野球」で勝ちきった夜だ。投打、全員の勝利なんだけど、この夜の絶対ヒーローは島田海吏である。彼の打そして無類の足でもぎとった決勝点はまさに値千金。渋かった。

 島田といえば、そう。金本が監督時代、自らの目でドラフト指名を決めた秘蔵っ子である。

 「あいつは足で獲った。俺は、あいつを相当、買ってたよ」

 金本は僕にそう語っていた。

 9月のナゴヤといえば…

 何年か先、島田の足でもぎとった星を思い出したい。皆さん、ご覧になりましたか?打って、走って、生還した彼の形相を。あれこそスピリットを感じるスプリント。金を取れる足だ。=敬称略=

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