読んじゃいけない新聞
【9月30日】
ときのヘッドコーチ黒田正宏に言われたことがある。
「風が良太を使えと書いとったやろ。だから使ったんや。良かったやないか」
今から7年前のハナシである。
和田豊政権時代、新井良太が殊勲者になったゲームがあった。前日、前々日もベンチスタートだった良太がその日はスタメン起用され、素晴らしい結果を出した。
試合後、黒田にぶらさがり「なぜ、きょうは良太をスタメンで起用したのか」とたずねると、名参謀はニヤリと眉を下げながら、冒頭の答えを返してきたのだ。
その日先発した相手投手と新井良太の相性、球場との相性を当日の紙面で示しはしたけれど、実はたまに効く鼻…。練習を眺めながら打ちそうな…ぶっちゃけ、そんなインスピレーションで書いた。
当日のデイリーを黒田が読んだことは確かだけど、その筆に従って起用したかどうか。あれは黒田のリップサービスだったかもしれないけれど、結果が出て「良かったやないか」と言われれば、こちらも悪い気はしなかった…というのがあのときのホンネだ。
知る限り、矢野燿大もコーチ陣も新聞を読んでいる。毎日必ずかどうか知らないし、誰にどの新聞が好まれているかも分からない。もしかしたら、吉田のコラムだけは読まねえと思っているコーチだっているかもしれない。誰だって好き嫌いはあるだろうから。
僕はずっと佐藤輝明をスタメンで起用してほしいと書いてきた。
今もそう思う。全虎党にアンケートでも採らない限り世論は分からないし、V争いの中で連続無安打が長引けば当然「出さない方がいい」に傾くに決まっている。
僕は、輝は「使い続けても打てない」ではなく「使い続けなければ打てない」と感じるので勝手にそう書かせてもらっている。だがそこは矢野の専権事項であり、だからこそ当欄で「使うべき」「使ったほうがいい」なんて書き方はしていないしこれからもしない。
数字、確率、そして、鼻、インスピレーション。それを頼りに当欄を書いている。矢野はこの夜も輝をスタメン起用しなかった。そして、スタメンで使った小野寺暖が打った。
ある虎将に聞いたことがある。
「新聞に書いていることとか、評論家の指図には従いたくない」
監督時代の金本知憲にその話を振れば「まあ、分かる気もする」と笑っていたが、矢野はどうか。 矢野はおそらく何を書かれようが自分がこうだと思えば、信念を貫く。それは、他人の指図を聞いて裏目に出たときに後悔するから…いや、すべて臆測である。
そういえば、今回の自民党総裁選を終え、麻生太郎財務大臣がこんなことを言っていた。
「○○新聞では(河野太郎候補が)勝つことになってましたからね。やっぱり○○新聞を読んじゃいけないと思った人がいるかどうか知りませんが…」
読んじゃいけないコラムではいけないけれど、書きたいことは書くことに決めている。=敬称略=