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 【10月8日】

 柴崎岳のバックパスが命取りになった。サッカーW杯最終予選である。日本代表の戦いは背筋を伸ばして観る…昔から変わらないけれど、その分、大事な一戦を落とせば、しばらく立ち直れない。

 4年に一度、W杯がかかれば、侍たちは命を削りながらピッチに立つ。ここが正念場。絶対に負けられない。そんな日が必ずやってくる。きのうのサウジアラビア戦も間違いなくそれだった。しかし結果はご存じの通り。これで森保一への采配批判は免れなくなるしそれどころか続投への風当たりも相当厳しいものになる。それがサッカー界の〈常識〉であることはかつて番記者時代に知った。

 「ここ(次戦のオーストラリア戦)で勝点3を取れなかったら……。きっと森保監督も分かっているんじゃないかな」

 これは「サッカーダイジェストWeb版」でセルジオ越後が綴ったものだ。国際大会の最中に代表監督が解任…野球界ではあり得ないことが起こりうる。セルジオ越後は自身のYouTubeチャンネルでも、失点シーンに怒りを隠さず、「(サウジから)船で帰らせろ」とぶちまけていた。

 サッカー界では、欧州メディアの代表チームへの辛辣さが有名である。僕の記憶で鮮明な酷評は、14年ブラジルW杯で予選敗退したイタリア代表へ向けられたもの。

 「馬車はカボチャに、馬はネズミに戻る。そして、体は全て消えた」 

 グループリーグ初戦でイングランドに勝利しながら、第2戦でコスタリカに敗れた代表チームを魔法がとけたシンデレラに例えて腐す、同国の有力紙があった。

 しかし、ふだん辛辣だからこそ目立ったのは、同紙とシェアを二分するもう一方の有力紙、その見出しだった。

 「crediamoci」

 原稿は楽観したものではなかったが「これが本当のイタリアではない」。「信じよう」と。英訳すれば「believe」である。 絶対に負けられない。今の阪神は、支持者の多さでいえば、代表チームのそれと同等の重圧を感じているかもしれない。5連勝で迎えた前夜はDeNAによもやの逆転負け。馬車はかぼちゃに…と表するメディアはなかったが、トーンは十色といえど、ファンの落胆はSNS上で溢れていた。

 高橋遥人の奮闘が及ばなかった神宮の夜である。優勝争いで奥川恭伸と投げ合う…そんな日を楽しみにしていたので、できることなら、もう少し堪能したかった。

 たったひとつのミスが運命を変える。そんなシビれた戦いを書けるのは仕事冥利に尽きる。誰だって、失点したい選手などいるはずもない。それが命を削った結果であれば、どんな結果が待っていようと、受け入れたい。もちろんこちらも我が事だから、しばらく立ち直れない夜もあるけれど。

 それでもまだまだ戦いが続く限り、可能性ある限り、こう綴る。

 crediamoci

 ここまで戦ってきたタイガースの選手を信じよう。 =敬称略=

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