同級生監督の涙

 【10月13日】

 日付が変わってからあらかじめ録画しておいたサッカーW杯予選を見た。きのう、深夜のことだ。ビデオを再生し、のっけから驚いたのは、国歌斉唱の際、森保一の目が真っ赤だったこと…。

 埼玉スタのカクテル光線に照らされた涙が光っていた。森保が選手をピッチへ送り出した直後である。きょうダメなら俺が責任を取る。そんな覚悟が滲んでいるようにも見えた。そして、試合が始まってまた驚いた。先発選手を3人変え、システムもこれまで敷いたことのない4-3-3。勝負手の攻撃的布陣に変えていたのだ。

 ポイチさん、マジか。夜中思わず独り言…というか、なぜか、こっちまで鼻がツンとなった。

 ポイチとは、森保一の保一をとって昔から呼ばれている愛称で、面識のない僕も勝手にそう書かせてもらっている。同じ1968年生まれの矢野燿大のことを星野仙一が呼ぶからと「テルさん」と書いたことはないけれど。

 ネット氾濫の今、結果が伴わなければ容赦なく罵声が飛びかう。森保へのそれは、数も内容も、見る限り、矢野へのそれより辛辣である。そして、擁護した者へも火の粉が飛ぶため、言葉を選ぶ関係者も少なくない。そんななか、東京中日スポーツでラモス瑠偉がこんな評論を寄せていた。

 「戦いながら森保監督は大胆かつ戦略的な指揮官へと成長している。(中略)負けたら監督がダメだとか、解任だと騒ぎ立てるのはもうやめようよ。森保監督を信じサポーターも団結し、この攻撃的なサッカーで、アジア最終予選を最後まで突っ走ろう。私は断言する。オーストラリア戦のMVPは森保監督である」

 矢野監督を信じ、ファンも団結し、この攻撃的な野球でペナントレースを最後まで突っ走ろう-勝てなかった夜、僕が当欄でそう書けば、虎党、そしてデイリー読者はどんな反応をするだろう。

 もうひとつも負けられない戦いに挑み続ける矢野はこの日、島田海吏を初めてスタメン「1番」で起用した。最多安打のタイトルへ突っ走る近本光司をクリーンアップに据え、前監督・金本知憲が見出したプロ4年目の韋駄天をリードオフマンに指名した。背中を痛める大山悠輔が2夜連続欠場を余儀なくされる苦しい台所事情…既に来季への「続投要請」を受けている矢野だけど、先のことなど分からないのがこの世界である。もちろん、それらを承知する指揮官はすべて覚悟の上で采配をふる。

 森保一に対し、ネットで「辞めろ」「責任を取れ」など罵声が飛び交う中で、埼スタのスタンドに掲げられたのは、森保を支持する青と白の大きな横断幕「MORIYASU NIPPON」。 

 「結果が出なければ、協会、監督、選手も責任を取る覚悟は出来ているので。終わってから判断してもらえばいい」

 森保日本の主将・吉田麻也はそう語っていた。

 虎は残り9戦。騒ぎ立てず、YANO HANSHINを信じて見守りたい。=敬称略=

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