知人の著書を読んで

 【10月18日】

 プロ野球選手、斎藤佑樹のフィナーレを見た。一昨日のことだ。マー君を凌いだ早実時代は面識がない。早大時代も上本博紀から少し名前を聞いたくらいで…彼はいつもテレビの中のスターだった。

 そんな斎藤に興味を持つようになったのは藤浪晋太郎と出会ってから…いや、晋太郎が思うようにいかなくなってからである。甲子園のV腕が辛酸をなめる。這い上がろうともがく。10代で王者になった晋太郎の試練を見るにつけ、これまで面識のなかったハンカチ王子が今どんな思いで腕を振るのか、聞いてみたくなったのだ。

 沖縄キャンプを訪ね、日本ハム広報の懇切な計らいで斎藤の個別取材がかなったのは何年前だったか。以来、毎春、名護で斎藤とサシで話をさせてもらうようになった。面識のない関西のオッサン記者に笑顔で接してくれて、こちらが恐縮するほど丁寧に対応してくれて…佑樹さん、ありがとう。

 斎藤と話す中でいくつかのインパクトが残るけれど、その一つは彼の言葉が想像以上に直球であったこと。佑ちゃんにとって僕は雑談の相手ではない。言葉を発すればそれはすべて記事になる可能性も、ネットで拡散される可能性もある。なのに、彼の言葉は杓子定規でも、通り一遍でもなく、いつもまっすぐな本心に聞こえた。そこには「人に嫌われることを恐れない」覚悟がのっかっているようにさえ思えた。ハンカチ時代の彼を知らない僕にはなおさら。

 佑ちゃんと関わりの深い阪神選手といえば荒木郁也だ。「ハンカチ王子」を生んだあの夏、西東京大会決勝で延長サヨナラで早実の斎藤に屈したのが、荒木の日大三高だった。個人的に荒木という男が好きで何度か食事へ行った。プロでも「斎藤は勝たなくてはならない相手」と語っていた荒木が奇(く)しくも斎藤と同じ年に縦縞を脱ぐことになるとは…。

 荒木が定位置を奪えなかった阪神に於いて、内外野の争いは来季から更にし烈になる。いや、必ずそうなってほしい。なぜ来季のハナシをするのか。もう優勝を諦めたのか。いや、この2戦、カープの新陳代謝を眺めながらそんなふうに感じざるをえないのだ。

 『嫌われた監督』-落合博満は中日をどう変えたのか-(文藝春秋社=鈴木忠平著)を読んだ。先月初版された知人の著書だけど、

落合こそ嫌われることを恐れない将であったことがよく分かる。

 「選手にあれだけのことをやらせてきて、どうあっても優勝させなければいけなかったんです」

 これは06年の優勝監督インタビューで落合が目を真っ赤にしながら語ったもの-。落合といえば、監督就任時「補強を凍結し、選手の能力を10%底上げして勝つ」とぶちあげたことが有名である。誰に嫌われようがチームを強くし、優勝させる。基本的に補強に頼らないカープこそまさに毎年それを目指し、「3連覇」が結実の証しになったわけだけど、そこに帰結する共通のプロセスが何なのかを考える。阪神は強くなったか…ずっと考えてみている。=敬称略=

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