「ミスの後」の心の行方
【10月20日】
痛い目を見る大切さ-。きのうそんなタイトルで当欄を書いた。
大事な試合を自分のミスで落とせば意識は変わる。カープ菊池涼介から大切な話を聞かせてもらい、心に留めようと綴ったつもりだ。
が、書き手がミスをしているのだから目も当てられない。19日のファイナル第2戦で末包昇大がS・ノイジーの打球を後逸した場面を取り上げたが、あろうことか、ライト末包のポジションをレフトと書いた。ミスに気付いたのは19日深夜。締め切り時刻を過ぎていたので後の祭り。早朝から会社に連絡を入れ、インターネット版だけ訂正させてもらった。
キャリア20余年の〈失策〉はみっともないが、いつも当欄で「ミスの後が大事」と偉そうに書いているので、そこは自分に言い聞かせ…三塁側のダッグアウトへ。
「試合が終わってからは人生で一番くらいのショックで(ホテルまでの)帰りの道中はずっと放心状態でした。しんどかったですけど、あれで(CSは)終わりではなく。次もまた試合があったので切り替える…ではなく、しっかり心に刻んでやっていかないといけない。そう思って来ました」
初対面の末包昇大に挨拶し、直球で聞かせてもらった。「ミスの後」の心の持ち様について。
思い出したくもない嫌なことを聞かれても、彼はしっかりこちらの目を見て答えてくれた。
さて、木浪聖也のビッグプレーで幕を開けた第3戦は、失策も、記録にあらわれないミスも出たが阪神が競り勝った。3連勝の勝ち抜けは予想しなかったが、ネガティブな要素も全て心に刻み、阪神が大願成就への挑戦権を得た。
試合後、鯉番に囲まれた新井を待って、バスに乗り込む前に声をかけた。終戦の取材で「阪神は強かった」と語ったが、では、阪神のどこに一番強さを感じたのか。
近くにいれば見えないストロングも、セ・リーグ5球団の中で最後まで食らいついた敵将だから感じるものもあるだろう。背番号25は真顔でこんなふうに返した。
「いや…。まだ、それは分からないです。これから、それをじっくり考えようと思っています」
整理も分析もつかない。そんな理解でいいと思う。が、きょうから来季へ向かう新井カープはもちろん虎の強さを上回るチーム作りを目指すことになる。
「チームを預かる者として、勝てなかったというところで悔いはあります」
新井はそうも語った。
当然だと思う。指導者として足りなかったもの…自らのミスを悔いなければ、また、省みなければ進化はないのだから。
新井は日本シリーズを見る。阪神がなぜ強かったのかを整理する時間になるかもしれない。
末包は「短期決戦の中で一番やってはいけないと思っていたのがミスですので…」と僕に話していた。ミスをしないチームをつくってきた岡田阪神は、来季、新井の目指すところになる。切り替えるではなく、引きずる-そこに強みが生まれる。=敬称略=
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