不正解のピーキング

 【11月14日】

 キャンプ休日に旧知の選手、球団関係者に連絡してみると、まず繋がらない。LINEしてもなかなか既読にならなかったりする。そういうときは、十中八九、彼らはゴルフ場にいる。

 「連絡すみません。いま、ハーフ終わりました」

 ってな返事が常だ。野球選手のゴルフ好きは「定期」。プロ顔負けの名人もいるし、若くして転身した選手も知っている。

 オフは球団公式のラウンド、コンペもあるし、プライベートの誘いも増える。

 「ある程度、腕を磨いておかなければ迷惑かかりますから」

 若い選手からそんな話を聞いたこともある。

 僕はゴルフやりません…という選手をほぼ聞かないし、「誘いに応じているうちに予定がどんどん埋まってしまって…」と、苦笑いする者もいるくらいだ。そういう選手に「練習は?」と聞けば、そこは「うまくやりくりして時間を作っています」とのこと。

 このオフ、阪神の主力選手たちには、ゴルフも、それ以外の様々なオファーも飛び込んできているはずである。

 「練習(の時間)を確保するのに、ちょっと困ってます。もうちょい練習したい…」

 おととい、村上頌樹はそう語っていたそうだ。38年ぶり日本一の恩恵だろう。テレビ、ラジオ、イベント、取材…多くの媒体から引っ張りだこ。想像に難くない。

 阪神に限らず、有名どころになれば、毎年そこそこの露出はつきものだが、翌シーズン結果が出なければ、ときに意地悪なメディアから「オフにテレビに出すぎ…」などと揶揄されたりもする。人気者の宿命だが。

 私見を書けば、とりわけ活躍した主力は「どんどん出ればいい」と思っている。野球振興にもなるし…なんて型にはまったことは言わない。オフの自身のマネジメント力も培われるからである。

 イベントに出過ぎて練習量が足りませんでした。成績がふるいませんでした…この種のエクスキューズが格好悪いことを「今の選手は、みんな心得ていますよ」と、旧知の球団関係者は言う。

 そこで以前も少し紹介したとんでもない昔話を書いてみる。

 僕がカープを担当した時代、正捕手の西山秀二が好成績を残したシーズンがあった。そのオフ、驚くべきことに西山は練習をほぼしなかった。「試してみたんよ」とのちに西山は僕に言ったが、にわかに信じがたい逸話である。

 オフに練習しなければ、翌シーズンどういう結果になるのか「試したかった」そうだ。

 西山曰く…主力は2月1日のキャンプインに照準を合わさなくとも、3月終盤にピーキングすればいいわけで、それならば、12月、1月にがむしゃらに練習しなくても…という魂胆だった。

 が、翌シーズン西山の成績は…いわずもがな。「特にバッティングが全然あかんかったな」。 

 マネしないように…って、誰もしないか。=敬称略=

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