2人で143試合の形
【11月21日】
日本シリーズのさなか、梅野隆太郎と話す機会があった。といっても、束の間である。彼は僕を見つけて「あっ、お久しぶりです!元気でしたか?」と言ったので、こんなふうに返した。
元気でしたか?は、こっちのセリフやで!
「ああ、そうですね!」
梅ちゃんは笑っていた。
聞かれたくなかったかもしれないが、このとき、夏秋に去来した心の持ち様をたずねてみた。
ケガをしてから、気持ち的には相当難しかったんじゃない?
「難しいですね…。最初は何とか(ポストシーズンに)間に合わせたいと思っていましたけど、早く治したいという気持ちをもちろん持ちながら…でも、これだけは気持ちだけではどうにもならないことだったので…」
そんな梅野がこの日、契約更改交渉に臨み、現状維持でサインした。今季は開幕から主戦捕手として「チームの顔」になるはずだったが、8月のヤクルト戦で左尺骨を骨折して戦線を離脱。CS、日本シリーズ中のカムバックを目指して、本人曰く「色んな場所で治療した」そうだが、結果的には、間に合わなかった。日本シリーズは第6、7戦でベンチ入りし、仲間とともに歓喜の輪に加わったわけだけど、そりゃ消化不良の23年だったに違いない。
グラウンドに戻りたい。マスクをかぶりたい。打ちたい。勝ちたい。貢献したい…。そんなジレンマ、鬱積したフラストレーションで、思い切り叫びたくなる夜だってあったかもしれない。
「考える時間も作れたし、来年に向けてコンディションを見つめて、ベストパフォーマンスができる体を作るだけです」
契約書にサインした後の会見で梅ちゃんが、それでも、ポジ要素のコメントに終始したのは、見ていて気持ち良かった。
さて、読者の関心事は来シーズンの起用法である。
「梅野でええんちゃうの?ゴールデングラブとか、みんなが認めた賞なわけやから。そら、総合的にワンバンとか、盗塁刺すとか、肩とか、色んなのを含めて選ばれてるわけやんか。そういう選手はやっぱり使わなあかんやろ」
これは昨秋の岡田彰布談話である。早々に「梅野=正捕手」を公表したわけだが、果たして来季はどうなるのか?
「レギュラーキャッチャーできるのが2人いてるので、これはまた、投手の兼ね合いとか、2人で143試合…。そういう形になると思います」
こちらは、先日ABC「newsおかえり」に出演した際の虎将のコメントである。
これで24年は梅野と坂本誠志郎の「併用」「W正捕手」でいくことが決まった…と書いて間違いない。とはいえ、両者は「自分が正捕手」だという矜持をきっと持ち続ける。プロだから。
「来年に関してはすごくワクワクしている」。梅ちゃんの目がキラッキラの会見を見れば、書き手だってワクワクする。=敬称略=
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