例えば君がいるだけで

 【4月23日】

 石井竜也の国歌独唱で幕を明けた横浜の夜である。思いっきり「米米」の世代だし、学生時代に楽曲をカラオケで歌いまくった者としてはプレーボール前からテンション爆上がりだった。

 できれば、試合後のライブも見たかった…なんて贅沢は言うまい。『君がいるだけで』を口ずさみながら、拮抗(きっこう)したゲームを追った。

 たとえば、森下翔太がいるだけで…そんな試合が多い今シーズンである。

 この夜もそうだ。阪神が1点を追う六回。1死一塁の局面で背番号1がレフトへかっ飛ばすと、スタートを切っていた中野拓夢は三塁へ。さらに中継プレーが乱れる間に一気に同点のホームへかえってきた。相手エラーで打点はつかなかったが、森下の打席は昨季以上に得点の匂いがする。打点ランキングでトップ争いするクラッチヒッターだから、そりゃもちろん勝負強いんだけど、2年目にしていよいよ代役がきかない存在になってきた。

 いや、実はこのシーンを見ながら、森下の心境以上に気になったのは、送球ミスしたDeNAのレフト楠本泰史のそれである。カバーしてくれよ…彼がそう感じたかどうか分からないが、この同点劇で先発A・ジャクソンが降板。延長十二回までもつれる展開になっただけに神妙だったはずだ。

 レフトといえば…

 アメリカから帰ってきた筒香嘉智はどこを守るのだろうか。聞けば、T・オースティンが故障離脱したことで一塁を守る可能性が高いそうだが、そうなればレフトは佐野恵太。じゃ、オースティンが帰ってきたら?

 三浦大輔にとっては「たとえば筒香がいるだけで」心が強くなれたとしてもDeNA野手陣にとってはどうか。ポジション争いが熾烈になれば楠本に限らず死活問題…。必ずしも筒香の加入を歓迎してなかったり…いや、ヨソのお節介はほどほどに。

 そういえば、筒香を過去に一度だけ取材したことがある。17年シーズン終盤のこと。「補殺」をテーマにコラムを書きたくて横浜スタジアムの一塁ベンチに彼をたずねた。

 ①鈴木誠也=10

 ②坂口智隆=7

 ②アレックス・ゲレーロ=7

 ④筒香嘉智=6

 これが17年のセ・リーグ外野手の補殺ベスト4。送球によってアウトを奪った際に記録される「補殺」だが、当時、失礼ながらレフト筒香に「レーザービーム」のイメージがなかったので本人に聞いてみたかった。

 「補殺数が多い?もちろん、返球の質にはこだわっています。大事な場面で刺せれば流れがきますし…」

 この年の筒香の守備率は・995でセ・リーグ3位。「打つ」だけの人ではなかった。

 4時間13分で決着つかずか…。猛虎は今年もポジション固定で序盤から首位を走る。レギュラーを脅かす野手の底上げはレフト前川と…。「君がいるだけで心が強くなれる」。岡田彰布にそう思わせる「新風」の出現も楽しみにしたい。=敬称略=

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