アグーに負けない10年に…

 【1月19日】

 こどもは正直だ。好きな選手は?と聞かれれば、オトナなら「梅野さん」と答える。でも、ちびっ子は違う。

 「やまかわせんしゅ」

 そりゃそうだ。ここ沖縄だもんな。

 阪神のキャンプ地・宜野座村で自主トレを公開し、そのあとトークショーを開催した梅野隆太郎である。地元の野球少年が大勢参加した質問コーナーではイレギュラーな球がどんどん飛んできた。しかし、さすが鉄壁のブロッキング。柔らかな口のこなしでナイスカバー。でも、この質問だけは…

 「かのじょ、いるんですか?」

 おいおい…。思わず、司会者はマイクを外し、「梅野選手、結婚してるからね。彼女、おったらまずいんでね」と、ジョークで会場を和ませた。

 近年そっち系の文春砲がよく飛んでくる球界だけど、こどもには…。それにしても沖縄のちびっ子はウチナーのスター山川穂高が大好きだ。前日、沖縄中部の村であるスター選手の自主トレにお邪魔してきたのだが、そこでも「好きな選手」を聞かれた野球少年が口々に「やまかわさ」。理由は「よくうつからさ~」。つまり純朴な瞳には「仕事の結果」しか映らないのだ。

 山川といえば、91年生まれの33歳。梅野と同い歳で大学ジャパンでは共に日の丸を背負った仲だが、昨季は新天地で本塁打、打点の2冠。脂が乗ってまるで老いを感じさせない。

 素晴らしい才能が溢れる91年世代だが、あえて「○○世代」と名付けるならばどうだろう。投手なら菊池雄星、大瀬良大地、九里亜蓮、石川柊太、岩貞祐太…。野手は梅野、山川のほかに筒香嘉智、今宮健太、堂林翔太、岡大海…。終わってみれば梅野世代。僕はまだまだそれを期待している。

 梅ちゃんが宜野座村で自主トレを始めて今年で10年。そんな節目に同村へ「恩返しの意味で」トークショーを開催した。僕が彼に聞きたかったのは、この先10年。まだまだ若い。43歳になる過程で、どんな生き方をするのか。

 「自分の中では『やれる』と思ってやっていますし、33歳になっても全然トシだという感覚はないので…。自分への期待もありますし、そういう意味では、これから先の10年、自分がどうなっていくのかという楽しみもあります。自分では決められない厳しい世界だからこそ、逆に、もっとがむしゃらにガツガツいきたいな、と。プロ野球でこれだけ試合に出させてもらっているので、恐れることは何もないですし、もっと自分の色を出せるように…。自分が進化するために磨いていけたらと勝手に思っていますけどね…」

 仲良しの山川も頑張っている。

 「アグー(山川のあだ名)は、まだまだ向上心を持ってやっているので、あいつに負けないくらいの向上心を持ってやっていきたいなと思いますよ」

 10年前、ここで初めて自主トレした23歳と僕のやりとりを思い出した。

 捕手の理想型ってどんなもの?

 「俊敏で動ける捕手です」

 この10年で3度のゴールデン・グラブ賞。縦横の疾さ無尽の「要」が再び自分の色を追う旅に出る。=敬称略=

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