福留孝介の隣で見た逸材

 【2月15日】

 福留孝介と一緒に試合を見た。25年初の対外ゲームが宜野座で行われたこの日、テレビ解説の仕事はなかったそうだけど、彼はプレーボール直前に僕の隣席へ来て言った。

 「宗山の反応を見たいんですよ」

 楽天の1番遊撃でスタメン出場した「10年に1人の逸材」に興味津々で初回から食い入るように見つめていた。

 「バットの出方がいい…」

 オトナの事情で「孝介の視点」を全て書くことはできないのだが、初見でベタ褒めだったことは記しておく。

 遊撃手といえば、阪神は木浪聖也がチーム1号を放って満員の宜野座を沸かせた。定位置争いはまだまだ序盤だけど、熾烈な競争でレギュラー候補のレベルが上がれば、それを勝ち取った者が「10年に1人」を凌駕する。僕はそんな光景に期待している。

 この時期のインパクトでいえば木浪のルーキー時代を思い出す。キャンプ期間の実戦すべての試合で安打を記録し、鳥谷敬の牙城を崩して開幕スタメンを勝ち取ったのだから驚いた。

 あれが6年前。年月の流れを感じるわけだけど、ここ数年で若返った阪神は「30歳の木浪」がもう大ベテランのように映ったり…。キャリア的にも今から脂が乗ってくる選手なのに、そう錯覚してしまうのだ。

 この日のスタメンオーダーを見れば若い順に19歳の井坪陽生、20歳の門別啓人、21歳の前川右京、25歳の佐藤輝明、27歳の豊田寛、28歳の中野拓夢…

 いい景色だけど、こう見れば気になるのが、中野より1学年上の29歳、島田海吏である。あっという間に8年目を迎えた彼だけど、年齢的にはまだ体力もバリバリだし、元気。キャンプはいわゆる「具志川組」のスタートだったが、この日は1番右翼でスタメン出場し、初回に初球を引っ張って右前へヒット。快足で好走塁も披露し、チーム初得点。福留もうなずいていた。

 島田を取材すれば、当然、レギュラーを目指している。そのためにオフに意を決したそうだが、目に見えて変化を感じるのが体のサイズ。本人に聞けば「ウエートトレーニングしながら4~5キロ増やしました。初めて80キロに乗せました」という。理由は「強くて速い、ライナー性の打球を打つため」。

 島田といえばストロングは言うまでもなくスピード。だから聞いてみた。

 「増量の決断」は怖くなかったか?

 「最初は怖かったんですけど、増やしながら、その都度スピードを確認して、大丈夫だったので。タイガースの外野はやはり打たないと…っていう思いでチャレンジしてみよう、と」

 そういえば、NFLの選手はトレーニングで増量してスピードを上げるもんね?そう言うと、島田は「そうなんですよ。(重くした体をうまく)扱えたら、絶対そのほうが強いじゃないですか」と言う。中学時代、あの桐生祥秀に100メートルで先着した超俊足の持ち主は、金本知憲監督時代に「10年に1度の速さ」で指名された素材ドラフトの申し子。快足に快速打という武器が備われば、球児阪神の外野構想に変化が加わるかもしれない。=敬称略=

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