新井良太の言葉が刺さる
【2月16日】
新井良太を訪ねて宮崎の日南へ行った。昨秋のことだ。広島カープのファーム打撃コーチを担う良太は、フェニックス・リーグを戦う若鯉に寄り添いながら打撃を指南していた。
「湘大、ちょっとこっちへ来いよ。この人、関西から来た吉田風さんという大御所だから挨拶しとけ」
良太がそんなふうにジョークを交えて手招きすると、高卒3年目の内田湘大(うちだ・しょうだい)が爽やかな笑顔で駆け寄ってきた。
「広島カープの内田です。よろしくお願いします」
お名前はかねがね。こちらこそ、よろしくお願いします。そう返すと、隣で良太は言った。
「こいつが育たなかったら、僕の責任って書いてください」
和やかな空気感でそんなやりとりをすると、内田は背筋を伸ばして「頑張りますので、見ていてください」。こちらが気持ち良くなるくらい溌剌と、そう言い切った。
あれから4カ月。宜野座で内田と再会した。練習試合が終わったら「久しぶりだね…」なんて挨拶しようかと思っていたら、ダメだった。先制打を含む4安打5打点。対外試合2戦目の阪神を相手に打ちまくり、鯉番に囲まれながら帰りのバスに乗り込んだ。
きっと各新聞社の広島版で大きな記事になるのだろう。いや、これだけのインパクトを残せば、全国版の扱いもデカいはず…。そんなことを思いながら、僕はこの日試合に出なかった大山悠輔の取材へ向かった。
新井良太といえば、阪神の打撃コーチ時代に大山と二人三脚で打撃向上を目指し、立派な4番に育て上げた指導者だが、その残影が日南で見た内田とのそれにかぶるのだ。
22年度ドラフト2位の内田は信頼を寄せる良太コーチに師事し、丸2年間マンツーマン指導を受けた。
良太は僕に言う。
「彼は野球に100%打ち込める才能があります」
シーズン中は朝6時から広島の大野練習場でマシン打撃に専心し、試合後も遅くまでバットを振り込む。1軍スタートした今キャンプは朝7時半までに球場入りし、報道受付が開始される8時には既に内田の姿が必ずある。いわば、鈴木誠也のカープ時代を彷彿させる練習量。カープ関係者の皆さんがそう口を揃える。
この日、宜野座の記者席には緒方孝市、前田智徳ら僕が若かりし頃にお世話になったレジェンドが座っていた。新井貴浩もそうだが、彼らの練習量は見ているこちらが吐きそうになるほど凄まじかった。時代のスタイル、アプローチこそ違えど、僕がカープを担当した当時の伝統を地でいく若鯉…それが内田湘大。そんなふうに聞いていたので、この日の4安打にも「なるほど…」と、うなずくしかない。
カープに限らない。虎にもいる。野球に100%打ち込める才能の持ち主が…。近々書きたいと思うが、そんな選手には肩入れしたくなるし、自然と拍手を送りたくなる。 =敬称略=
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