田中将大対坂本勇人見たさ

 【2月17日】

 那覇が熱かった。

 田中将大がシート打撃で投げる。そう聞いて巨人軍のキャンプにお邪魔すると、その時を待つ大勢のファンがスタンドでカメラを構えていた。

 背番号11がマウンドへ上がれば、指笛が鳴った。拍手も歓声も飛んだ。楽天を事実上の構想外で退団しようが、まだまだ人気は絶大。さすがスーパースターである。

 ボルテージが最高潮に達したのは、マー君が先頭の吉川尚輝にセンターへはじき返された直後だ。打席に坂本勇人が立つと、今度は指笛が幾十にも重なった。こちらも思わずスマホで動画を撮ってしまうほどセルラースタジアムが一瞬にして特別な空間になった。両者は2度のマッチアップで遊ゴロと四球。見守ったファンは結果よりも、その絵を楽しんでいるようだった。

 マー君と勇人は兵庫県伊丹市の昆陽(こや)という地域で同じ少年野球団に所属した。その名もタイガース。僕も兵庫の少年野球に携わっていたので名門の伝説をよく存じ上げている。

 投手坂本、捕手田中…地元で名を馳せた怪童コンビが、それでも、中学で同じ硬式のチームを選ばなかったのがまたおもしろい。ご存じ、その後も別々の道を歩んだ両人だけど、ともに高校生ドラフトの1位でプロ入り。あれから19年の時を経て運命に導かれるように………って、そんなドラマを当欄の読者は読みたくないか。

 敵陣視察なんて書けば仰々しいけれど、毎年この時期はGの様子を覗きに行くようにしている。

 マー君は吉川、坂本、丸佳浩、E・ヘルナンデスと2度づつ対戦し、安打性は吉川の一本のみ。降板後は巡回投手コーチの久保康生と長い時間コミュニケーションを取っていた。その後、戸郷翔征、F・グリフィンも登板。開幕戦ローテーション候補がどんどん主力打者を相手に腕を振り、僕の目にはすこぶる順調に映った。

 さらに室内練習場を見渡せば、見たくないものを…。トレーニングに励むライデル・マルティネスである。もうええってとボヤきたくなるほど、那覇の広いキャンプ地を歩くと厄介な戦力を見つけてしまう。大補強に踏み切った巨人の25年は果たして…。

 「風さん、阪神どうですか?」

 旧知の読売球団の方に聞かれるのを遮るように、巨人、強そう…と、先にかぶせておいた。いや、聞くまでもなく読売さんの戦力は誰が見ても強大。でも、あえて強さの源を引き出せば、球団関係者はそこに限らないという。

 「坂本、長野というリーダー2人が阿部監督を勝たせたいという思いが強いし、そこがブレないので、若い選手もその思いに引っ張られるんです」

 そんな強い思いに田中将大も加われば更に結束力は深まる?

 でも、そういう視点でいうなら、こちら猛虎も、リーダー的存在の面々が指揮官・藤川球児を勝たせたい思いが強まっていると僕は感じる。夏以降の勝負所で抜け出すには求心力が大事であることを宜野座のみんなもよく知っている。=敬称略=

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