尼崎で見た原口の負けん気
【4月13日】
懐へ入ってくる大竹耕太郎のスライダーをスイングすると、これが自打球となって左足を襲った。顔を顰め、その場にしゃがみこむ。見ているこっちはネット越しに案じたが、大丈夫だ。
立ち上がって再びバットを構え、仕切り直したその形相に1球も無駄にできない専心の心が見て取れた。
原口文仁の負けん気を見たくて尼崎へ行ってきた。ファームでの再調整を通達された33歳はこの日の朝からSGLスタジアムで汗を流していた。開幕からここまで6打席ノーヒット。代打出場した前日の中日戦は7回無死一塁で併殺に倒れ、1軍を離れた。
結果の世界。原口の心に雑念は一切なかった。勝敗を分かつ土俵で結果を残せなかった責任を感じながら、しかし、後ろ向きに振り返る時間が不毛であることを知るプロ16年目だ。
再出発のタイミングでこれ以上ない「実戦」の機会に恵まれた。雨音が天井を打つ新室内練習場でシート打撃登板の大竹と向き合い4打席に立った。
①遊ゴロ②遊ゴロ③四球④左前打
守備位置に野手が立たない以上、見た目になるが、結果はこんな感じだ。
開幕からファーム調整を続ける大竹は状態がいい。久々に近くで左腕の軌道を見させてもらった僕はそう感じたし、原口も感謝していた。
「ほんとに実戦の機会が今も必要なので…。そういった部分ではタイミングよく入れましたし、(大竹との対戦機会は)すごく良かったと思います」
キャンプ2日目にファーム組の具志川球場にお邪魔して原口を取材して以降、彼のバットは好調だった。2月は7割発進だったか。オフの成果をいかんなく発揮していただけに快音が遠ざかる姿を見るにつけ気になっていた。
何か違和感…練習段階で誤差を感じながらバットを振っているのではないか。この機会だから聞いてみた。
「練習の中では常に同じルーティンを心がけてやっていたのでそこまで違和感はなかったんですけど、やっぱり打席の中での対応がうまくいってなかったっていうのが正直なところで…。今後(ファームで)打席に立っていく中でそこの感覚のすり合わせや、自分の感覚と映像のギャップを埋めていかないといけないなと思っているんですけど、きょう、またしっかり頭をクリアにして修正に入れたので、またちょっといい感覚がもしかしたら…」
昨季のチーム代打成績を振り返れば阪神はリーグトップの・223。優勝した巨人のそれは・219。猛虎の初代「代打の神様」八木裕の代打通算打率・235を見ても、その難しさをあらためて知るわけだが、こちらは勝手にイメージ「3割」くらいを期待するものだから重圧の半端ない稼業だ。
「もちろん悔しいですし…。キャンプからしっかり準備してきて、そんな中で打席の内容が思うようにいかなかったので悔しさがありながら、早く上に戻れるように、もう一回、打つ方も守る方も機会があると思うので、しっかりやっていきたいと思っています」
原口の負けん気が彼本来の形になる日を待つことにする。=敬称略=
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