結果じゃないから結果が大事
【4月23日】
もともと、横浜出張の予定はなかった。でも急きょ来ることにしたのは、近本光司の表情を見て、言葉を直に聞きたくなったからだ。しとしと雨が降りしきるハマスタで近本と話をした。
試合前のことだ。試合後は絶対に話せない類はあるので、そういうときはタイミングを見はからう。互いの職種を取っ払った話でも真剣に耳を傾けてくれるのはありがたい。
もちろん野球の話はする。が、深い打撃技術についてシーズン真っ只中に彼が語りたがるとは思わない。だからあらかじめリアクションを予想しながら数字の話を振ってみた。
通算1000安打の話である。
「それはまったく…。そこは別に気にするところではないですね」
以前、数字への関心について聞いたことがある。中には、それに近づけば「意識する数字もありますけど」と語っていた。だから、ここで確認しておいたが、もう到達するまでこの話には触れない。こっちが勝手にカウントダウンするだけで、近本がこの数字にまるで興味がないことはこれまでの取材で分かっている。だから、その記録が目前になる前に念のため…。
さて、大山悠輔弾で決着がついたゲームを振り返れば、先制の起点は近本だった。初回にヒットで出塁し、今シーズン25本目。プロ通算958本目のHを記録すると、すかさず今シーズン4つ目、通算172個目の盗塁を決めホームを踏んだ。あえて個人記録を重ねて書いてみたが、近本が読めばきっと最後のくだりにしか関心がない。
先制の得点…である。
2打席目に四球。そして3打席目の四球は得点につながった。これも関心の的だろう。シーズンが開幕してはや20試合。近本の打撃や出塁、そして走塁がこのチームの活性剤であることは今年も揺るがない。
そこであらためて思い起こす彼とのぶっちゃけトークを。
シーズン前に数字的な目標を聞かれるの、嫌いでしょ?
近本「嫌いですね…」
その理由は?
そう聞けば、僕が想定した返答をどこまでも超える言葉を返された。
「成績だけって言ったら、それは個人の結果でしか見られていないわけでしょ。結果じゃないでしょ…って思ってるんですよ。でも、結果のスポーツですからね。だから、結果は残さないといけないんですよ。そう言わせないために…。プロセスが大事だと言ってもいいような状況を作るのが大事かなと思っていて…」
言うまでもなくプロ野球は結果の世界である。
今シーズンの個人目標は?
必ず聞かれる世界だ。
カメラの前で聞かれたらそれは答える。そして、また高い確率で有言実行もしてきた。でも、それを言うことに価値を見いだせないばかりか、その結果を捉まえて称賛されることも近本はどこかで違和感を携えているという。
結果じゃないから結果が大事。近本一流の哲学だ。=敬称略=
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