こっちのミスだと思います
【10月15日】
どうせ東京観光だろ?
そんな類いのLINEが沢さんきたので返信が手間だった。サッカー日本代表がブラジル代表に歴史的な勝利をおさめた前夜(14日)のことだ。
旧知の友人らが「ブラジルは本気じゃなかったね?」と言うのだ。一から説明するのは面倒だったが、少なくとも、僕はカルロ・アンチェロッティのあんな切羽詰まった形相は見たことがない。歴代最多、UEFAチャンピオンズリーグ優勝5回のイタリア人監督…といっても通じないので、とにかく欧州で一番の名将とだけ伝え、その人が「ブラジルが一度も負けたことのない日本」に負けるわけにはいかないだろう、と。そもそもブラジル代表メンバーだって来年のW杯に出るために篩(ふるい)に掛けられているので、手を抜けるわけがないのだ。
つまり、侍ブルーはガチのカナリア軍団に勝ったわけだけど、試合の分岐になったのはブラジルのミスだった。アンチェロッティも「我々はミスでコントロールを失った」と認めていた。
黄が青に2-0から逆転負けしたことは全世界へ衝撃をもって伝えられたわけだが、さて、こちら甲子園の黄と青の戦いも言うまでもなくガチンコである。王者の黄は青に負けるわけにはいかない。勝つ為の準備を整え、いかにミスを最少にできるか。これに尽きると思いながらゲームを追った。
あれは東克樹の…いや、DeNAバッテリーのミスなのか。隙なのか。
敵将の三浦大輔は「徹底できなかった、こっちのミスだと思います」と、責任を自ら引き取った。
六回である。
近本光司が東のモーションを盗み切って3盗に成功した。これが森下翔太の決勝打を呼び込んだわけだが、試合後に阪神サイドを取材しても核心をつくようなアンサーが聞けるはずがない…と思いながら、総合コーチの藤本敦士に直球でぶつけてみた。
あの3盗はミーティング通り?
「風さん、それは言えませんよ」
予想通り、煙に巻かれた。
この日、試合前の練習をみれば、野手は投手より約20分ほど早く練習を切り上げた。いつも通りクラブハウスで野手ミーティングを行っていた。もちろん中身は分からないし、近本本人があの3盗の種を明かさない以上、臆測でしかないけれど、近本はレギュラーシーズン中に何度も何度も「東を測っていた」はずだ。もちろんチームとしても測っていた。そして、ポストシーズンのここぞの瞬間に取っておいた…もしかしたら、近本が出塁した時点でベンチの藤川球児は「1死三塁で打席に森下」の想定を描いていたかもしれない。だとすれば、戦略班を含めたオールタイガースの勝利である。
東は「初球から(3盗を)してくるとは思っていなかったので意表をつかれた」と振り返ったが、DeNAはあの3盗でゲームのコントロールを失った…近本のパーフェクトな初球スチールは敵陣にそれくらいのダメージを与えたと言っていい。次戦に繋がる意義深い先勝だ。=敬称略=
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