福岡で「猛虎襲来」を…

 【10月25日】

 「阪神、強くなったね~」

 長年ホークスを担当する女性カメラマンから球場でそう言われた。なんだよ。上からくるね~。これ、G番に言われたらカチンとくるんだろうけど…

 不思議なもので、福岡の人から言われても、そうでもない。

 この彼女、古株で03年の日本シリーズも取材していた。あの鷹虎の戦いは「内弁慶シリーズ」なんて評されたけれど、やっぱりホークスが一枚上だったのか。2位からのし上がった14年はスコア以上に圧倒された感があった。いずれにしても、このドームでの頂上決戦はホークスに7戦7敗だったから「上から」何を言われても仕方ない。 しかしながら、03年からず~っと思っていた。ホークスが強かったのは分かる。が、阪神だって強かった。強かったのに福岡で一つも勝てなかったのは一体何だ。目に見えない何か。地元で鷹を守護する何かがあるのか。

 その答えを探るべく、新幹線で博多駅から地下鉄を乗り継いで福岡市東区へ向かった。中洲川端を経て箱崎宮前で降りて地上へ上ると…

 「勝利の神」

 そう記された看板が見える。

 筥﨑宮(はこざきぐう)である。

 参道を進み、二之鳥居、一之鳥居をくぐれば正面に拝殿。その前に目に入ってくるのが楼門…門下額に掲げられるのは「敵国降伏」の四字だ。

 「勝負の神様ということで信仰されておりますので、ホークスさんも毎年御参りに来ていただいていると認識しております。ダイエーホークスの時代からずっとですね」

 社務所を訪ね、同宮の片山椋介権禰宜(ごんねぎ)に教えていただいた。

 ここはホークスがキャンプ前に必勝祈願する御宮であり、今年も1月30日に球団会長の王貞治、監督の小久保裕紀、チーフベースボールオフィサー城島健司を先頭に、選手、コーチ、スタッフが参拝。「めざせ世界一!」と書かれた巨大絵馬を奉納したそうだ。

 ホークスが本拠を福岡に移してから今年も含めて11度のリーグ優勝を果たしているのは、間違いなく勝ち運の神様のご加護があるから…ですよね?

 そう聞けば、片山権禰宜は「そういうふうに捉えていただけると、ありがたいです」と、ほほ笑んでいた。

 鎌倉時代、元(モンゴル帝国)の軍が博多湾を襲来した際に同宮が被害を受けながら乗り越えたことから、勝運の神様として信仰を集めるようになった。昔、日本史で習った元寇…いわゆる「神風」が吹いた蒙古襲来である。

 九州で戦うホークスには「蒙古襲来に打ち勝った神」、そして「神風」がついているとは知らなかった。

 「やっぱりソフトバンク…。チームの文化、ダイエーホークス時代から続く伝統なので…。タイガースの伝統としてもそれが重要なのかなと」

 年始、「強いチーム」の概念を問われた虎将・藤川球児はそう語った。ホークスから最強の称号を奪えるか。鷹の守り神、その拝殿で「虎に勝たせてください」とはお祈りできないけれど…この先もいい戦いを。=敬称略=

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