編成「主導」の在りか
【11月1日】
地下鉄唐人町駅で列車を待っていると、年配のご夫婦に声を掛けられた。
「風さん、ですか?」
一緒に帰っていた他紙の記者が驚いたように僕の肩をとんとん叩く。
「風さん、呼ばれてますよ」
まだ耳が遠くなるトシじゃない。九州で自分の名が呼ばれるはずがないと思っているので、ただただ意識が向かなかった。というか、見覚えが…。
日本シリーズ第2戦、阪神がその戦いに敗れた深夜のことだ。
「いつも読ませてもらってます」
ありがとうございます。
「あすも載りますか?」
えっと、福岡ではちょっと…
「あすの朝、神戸に帰りますので」
あっ、なるほど。
「ウチの周りは、取材ノートと松とら屋を読みたくてデイリー買ってますので」
周り…?
「商売やってまして。ウチの社員もみんな…」
聞けば、チェーンストアを一代で築いたオーナーさん。生粋の猛虎党だという。
それにしても購読紙のチョイスまで経営者の主導なのか。光栄なことだけど、側近の皆さんもデイリースポーツを愛読していただいているのだとか。 そのオーナーさん、きょう11月2日に予定されていた日本シリーズ第7戦を現地で観戦予定だったそうだ。
福岡への再訪が叶わず、今ごろ残念がっているかも…。
いやはや、ソフトバンクホークスの壁は厚かった。阪神監督の藤川球児がオーナ報告の会見で「悔しさはない。相手が強かった」と述懐していたが、取材者の一人として異論はない。
第2戦のデュプランティエ?
あれも球児一流の戦法である。
勝つか負けるかの世界で、その外野から無責任に放たれるタラレバの御託はどうも好きになれない。
ただ……。
先のオーナー報告に於ける発言をすべて聞いて、ひとつだけ気になったことがある。それは、球児が語ったこのくだりだ。
「チームが物足りない時はすべて私に矢を向けていただいて結構です。それを元に頑張れたからこそ今日があります。日本一に届かなかったのも私の責任ですから」
言いたいことは痛いほど分かるし、球児ならではの矜持だとも感じる。でも、いまの阪神球団という組織は本来そうあるべきではない。もちろん監督に責任はある。しかし、そこに「すべて」はつかない。これは僕個人の御託ではなく、阪神がそのような運営方針を採用していないからである。
今回の日本シリーズは開幕2日前にドラフト会議が開催された。チーム編成に於ける一大イベント、そのソフトバンクのテーブルになぜ小久保裕紀の姿はなかったのか。日本シリーズへ向けたチームの調整に集中するために小久保は福岡に残った?そんなわけはない。つまり、編成業務の「主導の在りか」…。続きは次回。=敬称略=
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