フロントクオリティー

 【11月2日】

 福岡でソフトバンク関係者とお茶を飲んだ。先週のことだ。雑談に終始したが「取材」の類いで一つだけはっきりしたことがある。こんなこと書けば縁起でもないと怒られそうだけど…

 もし、来季ソフトバンクホークスが日本シリーズへの出場権を逸したとする。そうしたら同球団の指揮官はシリーズ直前に開催されるドラフト会議に出席するだろうか。しないだろう。

 今回ドラフトに小久保裕紀の姿がなかったのは、日本シリーズに集中するため…そんな事由がメディアを通じて世に出ていた。阪神との大一番に備え、福岡で選手の調整を視ることに集中できたことはもちろん事実だと思う。しかし、それが事の「本筋」でないことは球団で共有されていることだ。

 ソフトバンクは今季から阪神OBでもある城島健司がCBO(チーフ・ベースボール・オフィサー)に就き、実質上フロントトップの役割を担うようになった。分かりやすく書けば、チームを預かる現場は小久保が、編成業務は城島が、それぞれの最高責任者という形を採ります、と。つまり、すみ分けを明確にし、編成のイベントであるドラフトは完全に城島らフロント主導でやるので、監督は現場に専念してください、というわけだ。

 ウチは編成面の「フロント主導」を徹底している-。今ドラフトでソフトバンクはそれを外へ向け明確に示したわけだ。あの日、福岡に居た小久保はテレビでドラフト中継を見たという。ソフトバンクが組織改革元年と位置づけた今シーズン。是か非かではなく球団それぞれの「やり方」の話だが、早速そのやり方で日本一になったわけだから、幸先がいいということになる。

 翻って阪神はどうか。

 オーナーの秦雅夫は昨年の就任会見でこんなふうに語っていた。 

 「生え抜きの日本人選手が中心となる骨太のチーム作りという編成方針は不変。(補強の)具体的な内容はチームの実情、課題を一番熟知しているフロントの方で考えています」

 阪神もフロント主導が本筋ということ。だから運営の論理上、球児が「全ての責任」を負うことはない。

 今年のオフでいえば、ポスティングも、FAも、現役ドラフトも、外国人も…。近年阪神のフロントクオリティーは申し分ないので現場を預かる最高指揮官も持ち場に集中できる。

 球界の流れとしては、編成しかり、選手育成、さらには指導者を育てる教程など、今後、メジャー流を含む新たな取り組みを採る球団は増えていくだろう。どこまでやるかは別にして…

 海の向こうで腕を振った藤川球児はMLBのドラフトで監督が出席することがまずないことを知っている。編成面はフロントの「完全主導」であることもよく知っている。ソフトバンクがメジャー流を採用していることに特に驚きはないと思うし、元来、編成面に於いても「MLB寄り」の思考では…と想像する。ドジャースWS連覇の日に妄想する。もしかしたら来秋、日本のドラフトに阪神監督の姿もない?先走り過ぎると叱られるか。=敬称略=

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