「余裕ある操船」の準備
【11月9日】
札幌の料理店で福留孝介とテーブルを囲んだ、その夜に聞いてみた。彼が現役だった7~8年前のことだ。メジャーも経験したレジェンドのセカンドキャリアに興味があって…。
引退したら何をやりたい?
「札幌の雪祭りを見てみたい…。現役でいる間は絶対行けないから」
セカンド…いや、僕の質問が悪かった。でも、それも聞けて良かった。
確かにユニホームを着ている限りは2月の「雪祭り」はムリだ。
名だたる祭りは僕も行きたい。できれば寒い地方のそれに…。今年は早いうちに冬の東北へ行くと決めていた。
さて、昨日の続きを…。
お世話になる方に勧められ、弘前城の「紅葉祭り」へ行ってきた。青森市から車で1時間。開催期は11月9日までだからギリギリ間に合った。僕の場合、紅葉といえば昔から京都だけど、津軽のそれを見たかった。気温4度。冬の彩りに癒やされた。また、紅葉の天守閣から西方に望む雪化粧の岩木山は神々しく、引き込まれる。青森県の最高峰、「津軽富士」の愛称で親しまれる日本百名山を眺めれば、拝みたくなるのはその麓にある岩木山神社だ。
弘前拝殿の隣にある「白雲大龍神」の祠は岩木山から湧き出た水溜りの池があり、白い御旗が拝殿脇から大龍神の祠まで導くように掲げられる。「白雲」の名の由来は岩木山の山頂がいつも雲で覆われるところから…。確かにこの日も覆われていた。古来「白いもの」とは「浄化」のパワーを持つといわれ、そのエネルギーが邪気から心身を守護するとされる…って「るるぶ」じゃないので旅のお供はこのへんで。
「白いもの=浄化」といえば、福留が「雪祭り」を見たかったのも彼の本能が欲していたからか。なんて、こじつけてみたくもなるが…。さて、こちらはどこに居ても、高知で戦力整備に心血を注ぐ藤川球児を思う。日本シリーズでの敗戦に「悔しさはない」と言った虎の将だけど、胸懐は誰にも分からない。リーダー一流の悔しさは「あった」だろう。でも、それを前面に出すも出さないも球児の自由だし、まして、今頃になってまだシリーズの敗因を壁の向こう側から物申す論者には…もうええでしょ?
03年や05年、そして14年も、時の指揮官はシリーズの敗因を外へ向けてベラベラ論じてました?というか、そんな弁明、要らんでしょ。内部で省みて咀嚼して次へ向かう。それで十分。
今回、東北の旅を始めるにあたり、かつて青函連絡船の埠頭だった青森港に立ち寄った。今は観光用の資料館として停泊する「八甲田丸」の船長室にはこんな標語が掲げられている。
「余裕ある操船」
これ、全てのリーダーに通ずるような気がした。思いつく限りは、例えば時間をかけて指導することもそうだし、焦らずにフィードバックを与えることもそう。長丁場の負けられない航路で、それでも「余裕」を持つためには…。こちらもしっかり浄化を済ませ、2年目の藤川阪神がその準備を整える高知へ向かいたい。=敬称略=
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