春野といえば英国のサー

 【11月11日】

 春野へ来た。総合運動公園野球場のスタンドから練習試合を眺めれば、そこにはまだシーズンを終えない面々の熱量が集った。個人的にはここへ来ると思い出す。自分が熱かった20代…。

 その昔、春野は西武ライオンズ1軍のキャンプ地として賑わった。いや…知らなかった。大学時代のことだ。

 当時サッカー合宿でここへ来たら…「え?清原おるやん?あれってデストラーデ?」。春野サッカー場で高知大サッカー部との練習試合を終えたあと公園内を散策していると、黄金期の獅子に出逢えたというわけだ。ちなみにそのとき撮った郭泰源との2ショットは今も自宅の古いアルバムにある。それよりも…と書けばライオンズに失礼だけど、実はもっとびっくりな出逢いが春野の思い出として残っている。

 あれ…。ボビー・チャールトンちゃうん?

 いやいや、似てる外国人やろ?

 いや…。でも、めちゃ似てへん?

 フィールドでサッカー少年を相手に通訳をまじえて青空教室を開く気品に溢れた白人男性。その頃から取材意欲があったのか。チームの仲間を代表してスタッフらしき人に聞いてみた。

 「はい。ボビー・チャールトンさんです。いま、日本全国の子どもたちにサッカーを教えて回られています」

 ワールドカップ準決勝で2ゴールを挙げて母国を初優勝に導き、所属クラブのマンチェスターユナイテッドでは初の欧州王座の栄冠をもたらしたレジェンド・オブ・レジェンド。まさか春野で会えるとは…夢のようだった。イングランドサッカー界で数々の歴代記録を持つ伝説はその功績と品位によって英国王室からSir(騎士)の称号を与えられたことでも名を馳せた。だから正確にはここにも「サー・ボビー・チャールトン」と記さねばならない。

 サー・ボビーが当時やんちゃな日本の大学生に包み込むような笑顔で接してくれた春野が懐かしい。

 「正しい練習をすれば夢は叶う。正しい練習というのは、環境の善し悪しに左右されるものではない。大切なことは常に集中力を失わないことだよ」

 せっかくの機会だったのでサッカー教室で語るサー・ボビーの言葉を盗み聞けば、そんな趣旨の話をしていた。

 さて、あれから30年。久々に来た春野で見たかったものは様々あるが、一番はやはり西純矢だ。彼の打者転向後の初打席。「初」は見ておきたいし、客席からこの日一番の歓声があがっていたこともうれしかった。結果は虎番が報じている通り。それよりもこの先が楽しみで仕方ない。ネット裏のブースで試合を見守った藤川球児は西純についてこんなふうに語っていた。

 「数を与えてもらえるような練習態度ではあると思いますよ」

 数多く打席に立てるチャンスをもらえるか否か。西純の取り組む姿は「立たせたい」と思わせるものだという。

 サー・ボビーが言う「正しい練習」とは「集中力」。球児の言葉を借りれば「没頭」。そんな姿をきょうから安芸でたくさん見ておきたい。=敬称略=

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