全試合前売り完売の源

 【11月26日】

 レッドカーペットを歩く猛虎を眺めながら考えてみた。タイガースが優勝した年は必ずベストナインの表彰を取材してきたけれど、さて、03、05年になくて25年にあるものって何だろう。

 今年はみんな生え抜き。うん、確かにそうだ。

 03年=井川、矢野、J・アリアス、今岡、赤星

 05年=矢野、今岡、金本、赤星

 ちなみに23年の選出は大山、木浪、近本の生え抜き3人衆。今年は7人だから、それだけで壮観だけど、全員自前は誇らしい。ただ、昔から補強論者の僕は生え抜きだろうが、そうじゃなかろうが、勝てばなんでもいい派。だって、補強は立派な企業努力だから。

 生え抜きがどうこうなんてサッカーの世界ではないに等しいし、MLBだってそうだ。大谷翔平やB・スネル、M・ベッツは外様だから勝っても虚しい…なんてファンはいるだろうか。経営者の手腕で勝ちゃいいじゃないか。なんて書いていると、ニッポン野球の美学は違うんだよ!って怒られる?

 03年、05年の阪神は補強組の貢献があったから勝てた。でも、今のタイガースが携える哲学はどうか。

 「『生え抜きの日本人選手が中心となる、骨太のチーム作り』という編成方針は不変」

 これは、24年12月に阪神電鉄会長兼球団会長で阪神タイガースオーナーの秦雅夫が語った所信表明である。

 肝はここ…「生え抜きの日本人選手が中心となる」だ。つまり「幹」は生え抜きでいくが、必要とあれば「ピース(piece)」は補強を惜しまないということ。03年は勝つ為に「幹」を補強せざるを得なかった。典型は金本知憲であり、伊良部秀輝。しかし、23年、25年は「幹」が育って勝った。その結果がこの日の晴れ舞台である。

 補強でも生え抜きでも勝てばうれしい。でも、2択なら?ファン心理は後者であることがこんな数字に表れた。

 今シーズンの阪神はホームゲームにおいて「全試合前売り完売」を成し遂げてシーズンを終えた。Vイヤーでいえば、03年も05年も、実は23年もこれを達成できなかった。「全試合完売」だけでもビックリなのに、そこに「前売り」が付くのはもう…。今と昔では販売の方途も違うし、単純比較はできないけれど、今年の「快挙」はもっとファンに知ってもらうべきでは?

 さて、毎年アワードの会場で楽しみなのは、各球団の幹部とお喋りすること。ドラフト会議よりも雰囲気が和らぐのでこちらもフランクにいける。この日、よく話題にあがったのは阪神と日本ハムのトレードである。やはり伏見寅威の獲得には関心があるようで。

 坂本誠志郎が大きな「幹」。伏見は連覇の為に是が非でも欲しかった「ピース」。両球団の補強ポイントが合致したわけだが、日本ハムの幹部に聞けば伏見はこのトレードをめちゃポジティブに捉えているという。では、どちらの球団が持ち掛けたのか?この類いは皆さん口がかたい。僕?坂本、梅野に頑張ってもらいたい。補強論者?当然、伏見効果に期待する。=敬称略=

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