聞きたい寅威の失敗体験

 【11月28日】

 アライバの「アラ」が中日ドラゴンズのフロントに入る。23年以来、3年ぶりに球団復帰し、肩書は「本部長補佐」だという。外で培った経験をどんなふうに還元するのか楽しみだ。

 荒木雅博との思い出を書けば、彼と球場で挨拶するようになったのは現役晩年から。わざわざ名古屋から広島のトレーニングクラブ「アスリート」に通い、筋力強化に励むようになったことがきっかけだった。

 「アスリート」が金本知憲や新井貴浩らの練習拠点であったことを荒木はもちろん知っていた。当時、広島で共にテーブルを囲む機会があって「なぜ広島まで?」と聞けば、やはり「金本さんのように選手寿命を伸ばしたいから」と…。

 荒木は輝かしいキャリアを残して41歳で引退したわけだが、2000安打達成はプロ22年目、39歳のシーズン。驚くべきはプロ5年目までのヒットが15本だったこと。遅咲きの星だった。

 アライバの「イバ」は侍ジャパンを率いて来年WBCで脚光を浴びるが、荒木は彼らしく、ゆっくり球団に恩返しをしていくのだろう…

 ってなことを考えながら、きょうはプロ5年目までのヒットが21本だった伏見寅威の阪神移籍会見について書きたい。

 「年齢をあまり気にしていないので自分らしく明るく元気にプレーしたいです」 

 黄色いネクタイ姿の伏見はそんなふうに語っていたが、そうか…坂本誠志郎は32歳で梅野隆太郎が34歳だから、35歳の彼がいきなり野手最年長になるのか。肌艶なんか見ていると若々しいし、確かに、まだまだ年齢を気にしなくてもよさそうな…。それよりも会見のなかで興味深かったのは、東海大札幌高の後輩、門別啓人の印象に言及したときのこんな答えである。

 「いい投手だと思います。でも、もう一個、ローテーションを一年間守るにあたっては、少し物足りなさも感じる。そこはどうにか手助けできたらなと思います」

 こちらの関心は、伏見がこの先阪神でどんなふうに自身と仲間、後輩たちを高めてゆくのか。来て貰った以上は年齢に抗ってバリバリ戦力になってもらいたいので…。

 そういえば、遅咲きの荒木にこんなことを聞いたことがあった。

 晩年になって後進の選手に自らの成功談を伝えることはあるのか、と。

 「僕の場合、これをやったら成功した…というのは言わない。野球って、なるべく失敗を減らしていかないといけないスポーツでしょ。練習法もそうです。これをやると打てないということは絶対にある。失敗することは大体みんな同じだから、これは失敗しやすいよ…ということは伝えます」

 ベテラン野手が野手の後輩に指南することと、ベテラン捕手が若い投手に伝えることは趣が違うけれど、何だか通ずることもあるような…。伏見を取材する機会があれば、彼の成功体験、そして失敗体験もぜひ聞いてみたい。=敬称略=

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