今年も遥人対勇人を楽しむ

 【3月28日】

 ハイテンポな高橋遥人がこの試合で初めてセットポジションになったのは五回1死だった。岸田行倫に内野安打を許し、打席に坂本勇人を迎えたところでこちらのテンションも上がった。

 初回から4イニングを12人で料理する完璧な支配ぶりだった。プレーボールから1時間20分経つまでランナーを出さなかったわけだから、セットポジションの心地はどうか。リズムは狂わないか。その節介、プロで9年メシを食っている投手に向けることではない。でも、おそらく遥人にとって勇人はジャイアンツで最も意識する打者だから、ここが勝負の綾になる。そんな視点で見ていると、37歳にツーシームを拾われ、センターへ運ばれた。

 ごくごく些細な相手の変容を突いたとすれば、さすが巨人の象徴…なんて勝手に思っていたら、背番号29はこの試合で一番悔しそうな表情を浮かべ、マウンドで何やら呟やいていた。

 得点圏に走者を背負ったが、しかし、その後はセットで2打者を難なく封じ込めるのだから、この日の遥人に空隙はなかったということだ。

 ずっと忘れられない坂本勇人の言葉がある。

 「プロとして、そういうピッチャーを打つために練習していますから」

 21年にTGがマッチアップしたCSファーストステージ、その戦前の記者会見だ。勇人は報道陣から「意識する選手」を問われると、「高橋遥人投手です」と即答し、その理由を「プロとして…」と語っていた。聞いているこっちがうれしくなった。

 なぜ、遥人は名球会打者をそこまで「意識」させる投手なのか。多くのファンはその理由をご存じだろう。

 21年秋の「伝統の一戦」で菅野智之と投げ合った遥人は東京ドームで奪三振ショーを披露した。圧巻の6者連続三振、そのフィニッシュが坂本勇人だった。懐へ落ちるスライダーに空を切ったかと思えば、その勢い余って右膝から崩れ落ち、背番号6は尻もちをついてしまった。同ゲームで遥人は128球を投げ、13奪三振で菅野に投げ勝ち、4年目にしてプロ初完封勝利を掴んだのだ。

 翻って、遥人が勇人を意識する理由といえば、24年秋の大一番もその一つ違いない。グリフィンと投げ合った左腕は六回まで2安打無失点の好投を見せたが、七回に代打で出てきた勇人に決勝打を浴び、チームは0-1で敗れた。阿部巨人V1のシーズンである。

 早いもので遥人の初完封から5年が経った。八回に膝付近に打球が当たって冷やっとしたけれど、指揮官の藤川球児に言わせれば、それが一塁に転がってアウトになるのは「野球に対する運」。ありがたくそう思っておく。

 それはそうと、九回のピンチで岸田を三振に斬った遥人の目には、ネクストで待つ打者の影は映っていただろうか。できれば、見たかった。いや、今回は見なくて良かったのか。勇人は試合後、G番に言った。「次はやられないようにチームとしてやらないといけないなと思います」。今年も存分に両者の勝負を楽しみたい。=敬称略=

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