どこにでも一緒に行ける

 【6月17日】

 神戸空港発、11時15分のANA便で松とら屋は飛び立った。向かった先は「どうしても行きたい」と言っていた沖縄。今ごろ大好きな糸満港でたらふくマグロ食ってる頃か…。

 まっちゃん、そっちは晴れてるか?

 曇り?

 まあ、沖に出るにはそれくらいのほうがええか。

 それにしても、やっぱり空港まで送りに行ってよかった。足がおぼつかんのに「最後くらい独りで行かせてくれ!」言うて、ご家族困らせてな…。那覇空港にさえ降り立てば海んちゅが出迎えてくれるって、嬉しそうだったけど、少しは心配してくれる人のこと考えな…。しかし、今回ははよ帰ってこなあかんで。交流戦も終わったし、明日から球児と一緒に遠征行かなあかんのちゃうの……。

 「松とら屋本舗」の松下雄一郎が旅立ってはや一週間が過ぎた。この日、僕は「まっちゃんがこよなく愛した野球人」とともに線香をあげに…。 

 生前を振り返れば、3週間前に会ったとき「沖縄へ行きます」と聞いた。

 6月17日?まだちょっと先やな…。

 行く言うたら行くんやろうから、とめへんけど、念のため乗る飛行機の便名だけ教えといて。

 「えっ?」

 えっ?やないんよ。さすがに糸満まで着いていったら嫌がるやろうから。でも、神戸空港までは行くで-。

 そんなやりとりが懐かしい。

 風さん、阪神どうなってます?

 ゴメン、まっちゃん。

 きょうは甲子園ちゃうねん。あなたの大好きな人が「どうしても、まっちゃんのとこ行きたい」って言うから、夕方から付き添いで神戸のお宅へ。

 「初七日」はあなたが不在やから、手を合わせてしばらくご家族と話してから御暇しはったよ。帰ってきたら飛び上がって喜ぶものを置いてね…。

 それにしても、遺影、ええ顔してる。こっちはまだ時計の針が止まったままやけど…。「ところでいつ帰ってくる?空港まで迎えに行くから」。そんなLINEをしていたかったな。

 「連覇を見届けるまでは死ねない」

 そう話していた松とら屋は、虎の魂となって、この交流戦ラストゲームを沖縄の空から気にしていたと思う。

 指揮官の藤川球児は、まっちゃんを見送ったあの夜に言っていた。

 「これからは、どこにでも一緒に連れて行ける」

 まっちゃん、今回の糸満は2泊3日で我慢や。きょうの便で帰ってこいよ。空港まで迎えにいくから。ほんで少し休憩してからいこか。横浜へ。

 ところで…。そっちのテレビ阪神戦見られへんのかいな。

 放送がない?

 じゃ、ネットは?繋がりが悪い?

 Wi-Fiがない?知らんがな。

 阪神?ちょっと待って。えっと…。ああ、勝った。大山悠輔がでっかい一発。大竹耕太郎も素晴らしかった。

 球児?

 心配せんでも、いい顔してる。=敬称略=

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