無名投手が茨城名門・霞ケ浦へ 広島・遠藤の高校野球の思い出 田んぼ道を走る通称“3・2・1”「メンタルが鍛えられました」
高校野球シーズン限定でカープの選手に高校時代を振り返ってもらう新企画がスタート。第1回は、茨城県の霞ケ浦高校で3年間を過ごした遠藤淳志投手(27)。今季、リリーフとして新境地を切り開いている右腕の原点に迫った。
中学時代は軟式野球部に所属し、全く無名の投手だった。そんな右腕に声をかけたのが茨城の名門・霞ケ浦だった。プロへの道を切り開いた3年間。充実の期間かと思われたが、遠藤は意外にも高校時代を振り返り、「あまり良い思い出はないですね…」と苦笑いを浮かべた。
入寮後、本格的な集団生活が始まった。朝は6時に起床し、すぐさま着替えてグラウンドへ直行。朝一番からポール間走10本を含むハードなランメニューが課され、授業が終われば20時ごろまで練習。高校1年時の夏にチームは甲子園に出場するも、遠藤はベンチ外で、「一塁側のアルプススタンドでファウルボール捕ってました」。憧れの場所をスタンドから見つめながら、静かに闘志を燃やしていた。
今でも記憶に焼き付いているのが、通称「3・2・1」と呼ばれるランニングメニュー。学校付近に広がるどこまでも続く田んぼ道で短い休憩を挟みながら、3キロ、2キロ、1キロの順で走るメニューを数セット繰り返す。2年の冬には、後日インフルエンザと判明するほどの高熱と体調不良に襲われながらも、執念で食らいついた。「もちろん体力もついたんですけど、一番はメンタルが鍛えられましたね」。己の限界と向き合う孤独な道路で、折れない心が培われた。
そんな過酷な日々の中にも、高校生らしい青春の1ページがあった。「今だから言えるんですけど」と明かしたのが、夜の体育館を貸し切って行ったバレーボール。「ネットも自分たちで組み立てて遊んでました」と本気の遊びでリフレッシュ。仲間たちと笑い合った時間が最高の息抜きとなっていた。
最も深く胸に刻まれている試合がある。3年夏の茨城大会決勝・土浦日大との一戦だ。甲子園への切符をかけた大一番は、延長十五回までもつれる激闘。遠藤は投手と一塁を何度も交代しながら、腕を振り続けたが最後は決勝点を献上し、9-10で敗戦。試合後は「10月ぐらいまで肩が痛かったです」と数カ月痛みに悩まされるほどの死闘だった。
高校時代は聖地のマウンドに届かなかったが、後悔はない。「本当にたくさんのことを学んだ3年間でしたね。霞ケ浦でよかったと思います」と遠藤。取材中は高校時代を思い出しながら何度も「懐かしいな~」と笑みを浮かべた。今季は中継ぎとしてフル回転中。高校時代の3年間が礎となっていることは間違いない。
