【71】眼部の事故予防徹底を 中高生野球部員で見逃せない人数が失明

 「日本高野連理事・田名部和裕 高校野球半世『記』」

 学校管理下の児童生徒の災害で、医療費や死亡・障害見舞金給付を行っている日本スポーツ振興センターは、部活動での事故を無くすため、過去の事例からその発生要因や背景を分析している。同センターの事故調査研究員会に参画しているが、毎年具体的な課題を挙げて予防対策に取り組んでいる。

 昨年は歯牙折損などの事故、今年は眼部への事故に焦点を当てて予防策を検討している。

 2011年から15年までの5年間に、眼部の後遺障害で給付申請された件数は、小学校から高専まで全部で294件あった。この数字は部活動などでの事故で後遺症が残り、症状が固定したから見舞金給付が申請されたものだ。だから5年間に発生した件数ではないが、ほぼ毎年60件前後が発生しているとみていい。

 実はこの5年間の発生件数のうち高校野球が84件、中学野球(軟式)が50件で、中高合わせると、なんと134件に上り、全体の46%が野球部の活動中の事故だ。

 後遺症の内容を見ると片目の失明となる8級の障害は、高校野球で19件、中学野球が4件あった。高校野球の中にはマシンのボール入れなどの補助をしていた女子部員が3人いた。実に痛ましい事故だ。

 では実際の事例を見てみると、高校野球で一番多いのは、打球を打ち損ねて目に当たるいわゆる自打球による負傷で、13件あった。中学野球も一番多いのがこの自打球で、21件発生している。

 中学野球は軟式だからファウルチップが多いのだろうか。高校では5件がバントの失敗だった。

 次に多いのはティー打撃のトスを上げている部員への事故で、12件あった。中学野球ではティー打撃による事故例はなかった。

 事故概要によればアウトサイドのトスを無理に打ちに行ってトスの部員を直撃していた。またティー打撃用ネットのフレームに当たって跳ね返った打球で負傷した事例もあった。

 先の甲子園の全国大会中に、出場校のベテラン監督にティー打撃の注意点を聞いた。

 【1】打者はスタンスをネットに対して真っ直ぐに立つ、【2】隣の打者との間隔を十分とる、【3】早打ちは危険なので部員間ではやらせない、などだった。

 あと感じたのは「打者はネットとの距離をとりすぎるとフレームに打球が当たる可能性が高くなる」だった。医療関係の委員からは、「ゴーグル、フェイスガード」の着用を求める声が出ている。

 これには現場の指導者たちから積極的な声は聞けなかった。

 捕手用マスクを着用させている学校もあるが、できれば写真のようなティー打撃用のネットがあれば事故は防げるのではないか。

 これ以外の事故が多いのは、やはり送球、捕球ミスだ。

 「キャッチボールで他の組の送球がそれて目に当たった」、「試合形式の守備練習で、投手は捕手に投げる真似だけと思っていたのに実際に投球されて目に当たった」、「併殺プレーで処理したタイミングから一塁への送球はないと思ったのにセカンドから送球され当たった」など、思い違いのケースばかりだ。

 捕手はプレーの確認を野手にしっかり伝えることや、絶対にボールから目を切らない習慣を身に付けてほしい。自打球など避けられない事故もあるが、大半はうっかりミスによるものだ。

 いよいよ少子化が深刻さを増してくる。思いがけない事故で野球を断念せざるを得なくなるような事故はぜひ無くしたい。

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