【80】適切な休養日は必須 少子化による部員減を故障で加速させてはならない
「日本高野連理事・田名部和裕 高校野球半世『記』」
松野博一文科大臣は年頭の記者会見で、学校現場の教員の業務の適正化を発信していた。教員の働き方改革で、部活動の適正化を図り、教員の負担を軽減する方針を打ち出した。
昨年実施した小中学校生徒の全国体力・運動能力調査で、土日に休養日を設けていない学校が4割以上あると指摘している。つまり部活動の指導による教員の負担を軽減するため、週1日は部活動を行わない日を設ける指導を推進するという。
確かに指導者の実態も問題だが、部員の運動過多によるケガや慢性疲労を問題にしてきた高校野球としては大臣の会見意図とは少し視点が違うので、スポーツ庁政策課の担当者にこの課題について聞いてみた。
するとスポーツ庁では全国体力・運動能力テストで、運動過多と運動不足の2極化が進んでいることへの懸念を課題として挙げていた。
先ごろ日本中体連加盟の軟式野球部と学校外の活動である中学生硬式野球部の28年度部員数統計が出た。
日本中体連の軟式野球部員は、19年には30万人いたが、ほぼ毎年1万人ずつ減少、昨年は18万5000人にまで減少していた。特に昨年は前年比1万7000人も減少していた。
一方、中学生硬式野球部員は24年の5万2000人をピークに徐々に減少、昨年は4万9000人とピーク時から3000人が減少していた。
男子中学生の総数は10年前から10万人減少し、174万人になっている。この減少がそのまま中学生野球部員の減少に重なる。
1月21日に東京で開かれたプロアマ合同の野球指導者講習会(BCC)のシンポジウムに参加してきた。基調講演ではソフトバンクホークスの工藤公康監督が、小中学生にケガをさせない具体的な指導方法を熱心に語っていた。
僕は少子化の時代の課題として、指導現場で必要なこと、競技団体に求められること、そして医療関係者に対する要望をまとめた。
全日本野球協会と日本整形外科学会などで2年間にわたって全国1万人の小学生野球選手と指導者の実態調査にかかわった結果では、明らかに土日の練習時間が長く、休養日が少ないこと、そして一番気がかりなのは関東から以西のチームではほとんどシーズンオフがないことだ。
公式試合での投球制限だけでは障害の予防にならない。医療関係者には成長期の選手たちへの定期検診の推進を求めた。これからますます野球選手が少なくなる時代、けがで断念させる愚は何としても避けたい。