【97】防げる事故をなくそう 生涯にわたって生じる支障も
「日本高野連理事・田名部和裕 高校野球半世『記』」
先月、センバツ大会が始まる直前に大阪で「これで防げる野球練習中の事故」をテーマにシンポジウムを開いた。主催は日本高校野球連盟と弁護士らで組織する「スポーツ法支援・研究センター」と子供の健全な育成を図るNPO法人の「Safe kids japan」の3団体。
全国から都道府県高野連の理事長ら関係役員と、近畿地区の高校、中学の指導者、約230人が参加した。
学校活動中の事故に対し、治療費や見舞金を支給している日本スポーツ振興センターによると、学校の部活動の中では中学・高校とも野球部の活動中の事故が最も多い。しかも同じような事故が繰り返されていることは大変残念なことだ。
ケガでは下肢が多いが、後遺障害となると目と歯がそれぞれ4割を占める。この種のケガは生涯にわたって支障が生じる。
シンポジウムでは、「ケガをしない野球指導」「なくせる事故」をテーマに、打撃練習、守備練習、そして新入生に対する事故の発生状況を分析し、その防止対策を経験豊富な指導者に解説してもらった。
やはり事故が多いのは打撃練習中で、複数打撃練習が多い。このほかティー打撃でも多発している。いずれも防護ネットのフレームに打球が当たって方向が変わったため避けられなかったことによるものが目立つ。
打撃練習の解説は前横浜高校の渡辺元智監督で、「ティー打撃は、その目的をしっかり理解し、適度の休憩を挟んで、集中力を持って臨むこと」「防御ネットの破損がないか毎回確認することと、設置位置は必ず複数の部員で確認する」などを挙げている。
守備練習ではやはりイレギュラーバウンドによるものが多い。送球による事故も多い。
守備を担当した前関大北陽高校の新納弘治監督は「イレギュラーの事故を防止するには、30分に1回はグラウンド整備をすること」「ノッカーは、周辺の選手や捕球者後方の選手がボールに集中しているか、確認すること」「強い打球の練習ではファウルカップ、フェースガード、マウスガードを活用する」などを挙げた。
事故の6割くらいは新入生に起きている。入部間もない時期では、練習の流れが読めず、打球に背を向けていることもある。
担当した前報徳学園の永田裕治監督は、「入部後直ちに保護者に基本的な活動方針を説明する」「部員には日々の練習メニューを説明し、練習全体の流れを把握させる」を挙げ、1時間に1回の休憩を取るよう求めた。
練習中、全体を見渡して危険な状況がないか見張り役を置くのも良い方法だ。