さらば鬼平 中村吉右衛門さん死去 3月に心臓発作で救急搬送 療養に専念も復帰かなわず

 「11月歌舞伎公演」の取材会でおちゃめにポーズをとる中村吉右衛門さん=2020年10月
 「鬼平犯科帳 THE FINAL」の中村吉右衛門さん=2016年7月
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 歌舞伎俳優で人間国宝の中村吉右衛門(なかむら・きちえもん、本名波野辰次郎=なみの・たつじろう)さんが11月28日午後6時43分、心不全のため都内の病院で死去したことが1日、分かった。77歳。東京都出身。葬儀・告別式は親族で行う。3月に心臓発作で救急搬送され、療養を続けていた。歌舞伎界を代表する立役で、テレビ時代劇「鬼平犯科帳」シリーズにも主演し、お茶の間にも広く親しまれた。

 吉右衛門さんは3月28日、東京・歌舞伎座で「楼門五三桐」の石川五右衛門役を演じた後、ホテルで体調不良を訴えて救急搬送された。心肺停止状態だったとの情報も流れた。

 4月末には原因が心臓発作で、一般病棟に移って療養していることが明らかに。6月1日には7月の歌舞伎座公演を休演し、舞台復帰を目指して療養に専念すると発表された。

 近年は不調と闘いながら舞台に立っていた。1月の歌舞伎座公演を体調不良のため8日間休演。昨年12月にはウェブ雑誌の連載で「十月に、あることで手術を受けました」と告白し、「その影響が思ったより身体に響いてしまい、大声を出すと息が上がり、立ち上がるのに苦労し、歩くだけで心臓がバクバクします」と術後の後遺症に苦しめられていたことを明かしていた。

 2011年には胆管結石で入院して手術。13年にはのどにヘルペスを発症し、味覚障害と診断されて食事が取れず、体重が10キロ減ったこともあった。

 八代目松本幸四郎(初代松本白鸚)の次男として誕生。母方の祖父、初代中村吉右衛門の養子となり、4歳で中村萬之助として初舞台を踏んだ。

 66年に二代目吉右衛門を襲名。自殺を考えたこともあると自伝で明かしたほど苦悩の日々を過ごしたが、声が良く、大柄な身体を生かした豪快な動きの一方、内に秘めた感情を細やかに表現する演技で歌舞伎界を代表する立役となった。先人を徹底的に研究し、役の人物像を掘り下げ多くの当たり役を持った。

 06年からは初代ゆかりの演目を上演する「秀山祭」を開催。「松貫四」の筆名で歌舞伎の脚本も手掛けた。

 テレビでは「斬り捨て御免!」シリーズ(80年開始)、「武蔵坊弁慶」(86年)に主演。89年開始の「鬼平犯科帳」シリーズでは江戸の盗賊を取り締まる主人公・長谷川平蔵役を16年の完結まで約150作で演じ、お茶の間でも親しまれた。

 また、四女の瓔子さんが13年に尾上菊之助と結婚。孫が尾上丑之助となり、近年は祖父として、歌舞伎界の先人として、成長に目を細めていた。

 人間国宝選定時に「死ぬまで修行と思っています。80歳になった時に25日間『勧進帳』の弁慶を務められたら」と語っていた吉右衛門さん。夢はかなわず、旅立っていった。

 ◆中村吉右衛門(なかむら・きちえもん)本名・波野辰次郎(なみの・たつじろう)1944年5月22日生まれ、東京都出身。父は八代目松本幸四郎(初代松本白鸚)。後に母方の祖父・初代中村吉右衛門の養子に。48年、中村萬之助を名乗り初舞台。66年、二代目吉右衛門襲名。89年からフジテレビ系「鬼平犯科帳」に主演。2002年、日本芸術院会員。11年、人間国宝。17年、文化功労者。兄は現白鸚、おいは現幸四郎。75年に12歳下の知佐さんと結婚し、4女をもうける。四女瓔子さんは13年に尾上菊之助と結婚、孫は尾上丑之助。

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