下手の横好きで、ライブ活動を始めて２０年ほどになる。多くて年に数回なので大して場数を踏んでるわけでは無いが、客と一体感になれるライブハウスのあの空間が好きだ。

　西成の『難波屋』でやったときに最前列に陣取ったおっちゃんが大きな声で「兄ちゃん、テレビ出てるヒトやんかー」って…。もうギター弾き始めてるっちゅうねん！いったん、演奏をストップして即席のかけ合い漫才の始まりだ。盛り上がったところで、気を取り直し最初から演奏スタート。おっちゃんは酒のお代わりをしに席を立つ。ハイ、なんでもアリ！！

　先週末、大阪城ホールのステージにはデビュー３５周年のＢＥＧＩＮの姿が。本当は小さなハコが好きなんだろなあ。１万人の客を前に居心地悪そうにライブを始めたが、すぐに『１万人が入るライブハウス』にしてしまうところがすごい。躍動する３人を見ながら、実はあることを回想していた。

　２０１４年に大阪城ホールで開かれた『ＭＢＳ音まつり』で、なんとＢＥＧＩＮと一緒にステージに立たせてもらったのだ。リハーサルで思いっきりストロークしてみたら、ギターの島袋優さんが「いいね～。この曲は山本さんのギターソロから始めよ！」「マ・ジ・で・す・か！？」。そんなやりとりがあり、いざ本番。城ホールの静寂の中、私のギターの音だけが響き渡る。『笑顔のまんま』の始まりだ。一拍おいて、うなりと歓声が混ざり合った雲の上に乗せられたような、あの快感は死ぬまで忘れない。

　ＢＥＧＩＮといえば石垣島。この島にも多くのライブハウスがあるが、その中の一つ『ライブＢＡＲ　Ｂｂ』を経営するのが私の友人の金岡チカヲさん。大阪出身の金岡さんは関西で長くカメラマンとして活躍するかたわら、１９７１年に始まった野外音楽フェス『春一番』にもフリーカメラマンとして参加していた。

　ところがリーマン・ショックで仕事を失い、２０１０年友人のいた石垣島に移住。当初は農業に従事していたが音楽への思いが断ち切れず、５年後に『Ｂｂ』をオープンした。１０年間に台湾のロックバンド『Ｆｉｒｅ　ＥＸ』を招いて地元のバンドとの競演を企画したり、若い頃に憧れた『憂歌団』の木村充揮や内田勘太郎、さらには吾妻光良などブルース界の大物も招くなど、『Ｂｂ』は島の音楽拠点の一つになりつつあった。

　その直後、入居ビル側の都合で今年３月に閉店を余儀なくされたのだが、地元新聞社の記事や、最後に開催したライブでの閉店を惜しむ声の大きさに驚いたビルのオーナーが、一転営業継続を認めてくれたのだ。「九回裏、逆転満塁サヨナラホームランや！ヤマヒロ、何かやってーな」。すぐに思いついたのが、ラジオのリスナーと一緒に行くライブツアー！！番組スタッフに相談する前にオンエアで呼びかけたら予想以上の反響があった。これはもう実現するしかないな。（元関西テレビアナウンサー）

　◇山本　浩之（やまもと・ひろゆき）　１９６２年３月１６日生まれ。大阪府出身。龍谷大学法学部卒業後、関西テレビにアナウンサーとして入社。スポーツ、情報、報道番組など幅広く活躍するが、２０１３年に退社。その後はフリーとなり、２４年４月からＭＢＳラジオで「ヤマヒロのぴかッとモーニング」（月～金曜日・８～１０時）などを担当する。趣味は家庭菜園、ギターなど。