【大橋未歩アナ】70m先のCDほどの的を射抜く…パラアーチェリー上山選手のすごさ

 「大橋未歩のたまたまオリパラ!」

 「僕の武器は、正確性じゃなくて適当性やと思うんです」。70メートル先(ビル約23階の高さ!)にあるCDほどの大きさの的が10点満点。そのど真ん中を2本連続で射抜き、パラリンピック代表に内定したパラアーチェリー日本代表・上山友裕(うえやま・ともひろ)選手。2本目が1本目のごく近くに刺さり、強い日差しにもかかわらず影が出なかった。影さえもぴったり重なる恐ろしい正確性。しかし本人は『適当性』が強みだと分析する。

 照準器という小さな穴を覗(のぞ)き込み、的を狙う。当然真ん中を狙うが、上山選手は違う。狙いがズレることを前提としている。「屋外競技だから無風なんてことはまずない。しかも撃つ瞬間、どうしても筋肉の微細な振動が照準器に伝わる」。自然環境と筋肉から来るズレを上山選手は否定しない。共存する。撃った瞬間、ズレた方向と逆に腕をわずかに振る。練習で培った身体的勘で微調整するのだ。

 友達に誘われた体験入部からアーチェリー人生が始まった。大学から始めた上山選手が、名門同志社大学で2年からレギュラーになったのは異例だった。卒業と同時に辞めたはずが、たまたま就職した会社にアーチェリー同好会があり再開。その後、両下肢機能障害を発症。現在は車いすから矢を放つ。下半身が使えない分、上半身を作り上げフォームも改造した。

 「足が悪くなって、そりゃ生活で不便なことはあるけど、もし足を治して元の生活に戻りたい?と聞かれたら絶対NO。悪くなった足を使って今の自分があるんで。これをなくされたら困る」。言葉に熱がこもる。

 上山選手はさまざまな障壁を受け入れて共存して自分を最適化する。「強いものが生き残るんじゃない、変化できるものが生き残る」というダーウィンの言葉を思い出す。

 緊急事態宣言が解除され2カ月ぶりに練習を本格再開したが、休んだからこそ実感したことがある。「アーチェリーって、やっぱおもろい。練習嫌いなのに今は練習したいですもん」。上山選手は環境に応じてまた進化する。

 ◆大橋未歩(おおはし・みほ)1978年8月15日、神戸市出身。フリーアナウンサー。2002年入社のテレビ東京時代にアテネ、北京、ロンドン五輪を取材。18年にパラ卓球アンバサダー就任。19年から「東京2020パラリンピックの成功とバリアフリー推進に向けた懇談会」メンバー、パラ応援大使でも活躍。

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