箸袋は紙クズじゃなく神久寿(カミクズ) 歴史は57年 ユニークな発想と熱意で価値見出す

 単なるゴミと軽視される紙片に、価値を与える活動がある。箸袋趣味の会の東支部は今月1日から28日まで、作品展「コロナに負けず 人生をエンジョイ!」を開催中だ。都営浅草線五反田駅の改札からA1・2出口に向かう地下通路の側壁掲示コーナーに、展示されている作品は箸袋。飲食店や宿泊施設で箸を収める紙袋を、テーマ別にまとめて趣を醸し出している。同会の目指すものと現状を、東支部の副支部長を務める寺戸弘之さんに聞いた。

 同会は実業家で初代会長を務めた尾上隆治(1914-2005年)による箸袋1万種蒐集を記念して、前回の東京五輪と同じ1964年8月4日(箸の日)に発足された。東京、名古屋、京都に支部を持ち、現在の会員は約100人。会報「箸袋趣味」は年複数回発行され、会則や会歌もあり組織化されている。各支部で年数回の例会を実施。持ち回りで年に一度、全国大会が開催されるが、コロナ禍のため20、21年と連続で中止になった。

 紙袋を個別に論評するのではなく、設定したテーマにそった集合体を一作品とする。寺戸さんは「“紙くず”ではなく、“神久寿(カミクズ)”なる紙片です。箸袋のコレクションで大切なことは『無価値と思われているものに価値を見出す』ということです」と本質を説明。その上で「一つ一つは変哲のない普通の箸袋であっても、コレクターの視点で拾い上げられた箸袋が複数集まって、台紙に張られ作品となるとが然違ったものに生まれ変わります。箸袋自体にもお店や主人の熱意が込められた魅力がありますが、当会の視点は、箸袋単独を評価するのではなく、集められた総合体を評価します」と続けた。

 今回の作品展には「コロナ禍でも負けないで頑張っている会員の姿を、作品を通じて見てほしい、ご覧いただく方々にこんな楽しみ方があるのだという気付きを持って頂けたらと願っています」という思いを込めた。「四字熟語」「温泉旅館巡り」「面白い箸袋」「文様図案紋」「疫病退散!-雷紋-」などのテーマを持つ作品が並んだ。主なテーマ分類は以下の通りだという。

①絵・デザイン・マーク入り(花、木、紋、動物、魚介、船、車、人物、建物など)

②店名(ひらがな、漢字、カタカナ、外国語、数字、人名、珍名)

③形状(丸、三角、正方形、器物、箸帯、不定形など)

④色(赤、緑、黄、茶、など)

⑤文芸もの(詩歌、漢詩、短歌、俳句、禅語など)

⑥営業種別(そば、寿司、てんぷら、とんかつ、うなぎ、中華、ホテル、ゴルフ場、駅弁など)

⑦冠婚葬祭&縁起(寿、祝、長寿、開運、厄除け、延命、合掌、お骨揚げなど)

⑧あいさつ(おはようございます、ようこそ、など)

⑨外国の箸袋(中国、台湾、ベトナム、外国の日本料理店など)

⑩“おてもと”の字変わり、無地・無字

⑪江戸、明治、大正、昭和初期のものなど

 昨年は全国大会だけでなく、四半期毎に予定していた支部会も中止になった。箸袋蒐集を兼ねた外出や飲食が困難となり、新たに箸袋を集めることは困難を極めた。また、コロナ禍以前から新規会員が非常に少なく、会員の高齢化に伴う全体会員数の減少が顕著だという。寺戸さんは「箸袋の本来の目的は“箸を安全に包み、もてなしをする”ことであり、“日本人のおもてなし”の心を形で表現していると思います。箸袋を集め作品にすることで、箸袋に新たな生命を吹き込み、人と人との“はしわたしー橋渡し、箸渡し-”を行いたいと思います。会としては、新しい会員に加わっていただき、箸袋趣味の会100周年を目指していきたいです」と語った。“神久寿を用いた箸渡し”を次世代につなげようと、箸袋に命を吹き込み続けていく。

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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