本当にお酒は進むのか? 大阪でウワサの「呑める」アフタヌーンティーに行ってみた
オシャレ女子の定番ご褒美として市民権を得て長い「アフタヌーンティー」。イギリス発祥の軽食を楽しむ習慣のことで、紅茶を飲みながらスコーン、ケーキ、サンドイッチをいただくもの。お皿が2~3段のタワーになったティースタンドをSNSで見かけたことのある方も多いのでは。
品格漂うすてきな習慣に憧れを抱きつつ、個人的には疑問をいだき続けていた。それは、「これ、酒のアテになりませんのん?」ということ。
「おいしいものを少しずつ色々食べたい」欲求は、全酒飲みも共通して常日頃追求しているテーマなはず。今やあらゆるテーマのアフヌンを季節ごとに展開するのは定番化してきた。お酒好きに向けたアフヌン、あっても良くはないか?
そんななか、大阪のホテルに「お酒と楽しむナイトアフタヌーンティー」なるものが存在するとの知らせを受けた。伝統的なアフヌンとしての形式を保ちつつ、酒飲みの心をくすぐるような軽食の割合を増やしてくれているのだとか。
二言目には「ビールが飲みたい」と発言する酒好きライター(アフヌン未経験)が「本当にアフヌンで酒が呑めるのか?」を体験してきた。
■「え!瓶ビールも飲めるんですか!?」酒好きの心を掴む品揃えナイトアフヌンを開催しているのは、各線福島駅から徒歩2分の「ホテル阪神大阪」(大阪市福島区)。7階に位置するバー「カバレロ」は、重厚な扉を開いた先にあった。各テーブルにはゆったりしたソファーが並び、明度を落とした照明が心地よい空間だ。
席に着くと、すぐに料理とお酒がスマートにセッティングされる。凝ったお料理が美しい食器に贅沢に盛りつけられ、目の前に並ぶ。おお・・・これは非日常だ。早速、同行者の編集Mさんとスパークリングワインで乾杯する。
セットにはスパークリングワイン1杯が含まれており、アルコールの飲み放題(90分1800円)は別途で頼むスタイルだ。もちろんお願いすることに(アフヌンを注文するほとんどの人が飲み放題のセットにするそう)。
ここで驚いたのが、なんと飲み放題メニューに瓶ビールとハイボールが含まれていることである。一般的にはアフヌンにビールを合わせる人は少ないように思うが、私のような圧倒的ビール派の酒飲みにはなんとも嬉しい。編集Mさんもハイボール党(もちろん酒飲み)のようで、喜んでいる。呑兵衛歓喜。
有難くビールも注文する。アフヌンってSNSで数多美味しそうな写真を見かけるが、瓶ビールと映っている画はなかなか見ない。思わずスマホで何枚も写真を撮ってしまった。
■ 酒アフヌン、「ちょっとずつ、色々」の極みでは?お料理の構成は、1段目:セイボリー(塩気のある軽食のこと)、2・3段目:スイーツ、別添え:冷製パスタ、グラスデザート。6月1日から期間限定の夏メニューということで、マンゴーやパイナップルなど、トロピカルフルーツをふんだんに使った夏らしい爽やかなセットだ。
通常のアフタヌーンティーだと、セイボリー枠が全体に対して1/5程度が一般的なのに対し、このセットはおよそ半分をセイボリーが占めている。これは、お酒を飲ませにかかっている布陣だ。
スパークリングワイン、もしくはビールと一緒にセイボリーをひとつずつつまんで行く。3段目はしっかりお酒と楽しめるセイボリー。どのお料理も確実なおいしさで、しっかりした塩気と濃い風味がお酒を誘う味わい。ぐいぐいビールを飲んでしまった。
特に、左上の合鴨ロースとオレンジのサラダ仕立ては、ジューシーでうま味の濃い鴨と爽やかなオレンジの風味の相性が抜群でワインを呼ぶ。ぐいぐいスパークリングを飲んでしまった。
次に、別皿になっている冷製パスタをいただく。バジルがさりげなく香り、生ハムの塩味とマンゴーのとろみとバランスが良い。意外にすっきりしていて、白ワインと合うな・・・とまたもやお酒を変えて合わせて楽しむ。
麺を少し食べ進めたところで添えてあるトマトの冷製スープを少しかけてみると、更に方向の違ううまみと酸味が加わり、リッチなお味になった。ホテルレストランの技を感じる。スープにモッツァレラチーズが数粒沈んでいるのも、良いおつまみだ、酒飲みの心が分かっている、と編集Mさんと盛り上がってしまった。
■ 合間にさわやかスイーツを挟んで、またおつまみに戻り……無限ループ!ひとつひとつのお料理は少量だが、どれもしっかりした風味で満足感がある。セイボリーを半分、パスタを食べ切ったところで、少し目先を変えて、スイーツ類を合間に挟んでひと呼吸入れてみた。
果物のスープは日頃の酒場ではなかなかいただく機会がない。桃の豊かな香りと下層のリキュールが口内で混ざり、楽しいスープ。ワイン類と相性が良かった。こういう凝ったお料理を新しい提案で楽しめるのはホテルのバーならではないか。
この他にもマンゴーのタルト、パイナップルのケーキなど、フレッシュな味わいが嬉しいスイーツをいくつかいただく。すると、また塩気のあるものでお酒を飲みたくなる・・・という無限ループに突入し始めた。
編集Mさんはここでハイボールを頼み、「これは本当においしいハイボールだ」と香りを楽しんでいた。これぞバーでお酒を飲む醍醐味である。
それならばと私もここからは赤ワインに切り替えた。実は、確実にワインとの相性が間違いないであろうセイボリーを残しておいたのだ。計画通り、これがとんでもない酒泥棒だった。特にこのチキンとレバーのガーリック風味をすこしずつ口に含んで赤ワインを進めるのが最高だった。
さらに、ここで気付いたのが「え、スイーツとも飲めるじゃん」ということだ。たとえば、このチョコレート2種。
「チョコレート2種」なんて素っ気ないメニュー表記だが、これがアテにばっちり。赤い方がフランボワーズのベースに、ピスタチオを敷き詰めたもの。豊かなフランボワーズの残り香が、渋過ぎない赤ワインと良いペアリングになる。オレンジのコンフィが乗ったホワイトチョコも、後にしつこさを残さず楽しめる。
つまり、各スイーツもお酒との相性をしっかり計算された構成になっているのだ。
このほか、グラスデザートのチョコテリーヌなども、もちろん赤ワインにぴったりの風味で、まろやかな口当たりがメニュー全体の中で楽しい食感だった。
すべてのお料理を楽しむと、かなり満腹感がある。ボリュームもさることながら、豊かな風味やしっかりした味わいから来る満足感がどっしりあり、お腹を苦しくすることなく満ち足りた気分になれる。
最後に食後酒として、シーズナルカクテルの「トロピカルカクテル」をいただいた。これももちろん、飲み放題のメニューから選ぶことができる。しっかりと甘さもあるが果実由来なので、食中にも楽しめるような味わいだ。
飲み放題は90分制のため、時間いっぱい心ゆくまで飲ませてもらった。お料理、お酒、雰囲気すべてがプレミアムな雰囲気で、当然だが日頃通う酒場とはまったく違う体験である。新しいお酒との付き合い方が見つかった気分である。
今回はお料理に合わせてお酒を変えたが、ずっとビール、スパークリングと好みのお酒を貫いても良い。結論、かなり「呑めるアフヌン」だったと言える。この満足感を考えると、かなりコスパ的にもおトクと言えるのでは。
しかし、しっかり甘みのあるスイーツもメニューに含まれるため、甘いものが極端に苦手という人には楽しめないお料理もあるかもしれない。そうでないなら、お酒が好きなあらゆる人におすすめだ。
■ 同階にはサウナも…! サ活とヌン活両方できてまうホテルの所在地である福島は大阪屈指の繁華街。周辺には酒場の名店が多く、はしごで飲んだくれるコースも組みやすい。実際、バーに訪れるお客さんは地元の方、カップル、会社帰りの方などさまざまだそう。
なお、このバーの目の前には「阪神サウナ」があり、サウナ終わりにバーへ寄る方もいるのだとか。サウナとアフヌン、贅沢な組み合わせだが、とことん自分を癒やしてあげたい日におすすめだ。
紹介したメニュー『ナイトアフタヌーンティー ~Tropical night~』は8月31日までの期間限定だそう。営業時間は夕方5時~夜11時(LO夜10時半)で、料金は5000円(税サ込/2日前までに要予約)。土日祝が定休日なのでご注意を。
サイトで過去情報を見ると、季節ごとに内容を変えて提供しているよう。私は今から秋のメニューが楽しみで仕方ない。
取材・文・一部写真/橋尾 日登美
(Lmaga.jp)