大阪のホテルに世界レベルの「ガチ部活」が! 来年1月閉館で、受け継がれてきた技術の伝承はどうなる?

いよいよ2025年1月4日の宿泊利用をもって60年の歴史に幕を下ろす「大阪新阪急ホテル」(大阪市北区)。「最後にもう一度、会いに来てほしい」をテーマに、館内各所ではフィナーレイベントがおこなわれている。

地下1階のバイキングレストラン「オリンピア」で開催中の『ごちそう感謝祭』は連日、予約で満席に。そのほかのレストランや宿泊予約もかなり盛況だという。また1階には、ホテルの歴史を振りかえる年表やパネル展示も。寄せ書きコーナーには、真剣にメッセージを書く人たちの姿もあった。

広報担当者は「閉館までラスト30日を切り、お客様からもたくさんのお声がけをいただいて、最後なんだという実感が湧いてきました。最後の最後に多くの方にお越しいただき、本当にありがたいですね」と話す。

そんな同館のフィナーレイベントの一環として、12月7日に開催されるのが、氷彫刻の実演イベント。当日、約3メートルの高さの巨大氷彫刻に挑戦するのは、同ホテルを活動拠点としてきた「阪急阪神ホテルズ」の社内部活動「氷彫刻制作クラブ」のメンバーたちだ。

広報担当者によると、世界大会に出場するような人材も複数輩出している「ガチ」の部活だそう。そんなメンバーが当日制作を披露する氷彫刻とは、どのようなものなのか?「クラブのマネージャー的存在」という同ホテル内のステーキハウス「ロイン」統括シェフ兼大阪新阪急ホテルの副調理長である木村隆彦さんに詳しくお話を聞いた。

■「大阪新阪急ホテル」の厨房が拠点「氷彫刻制作クラブ」の活動内容とは?──「氷彫刻」の部活動、純粋に珍しいですよね?

確かに珍しいかもしれません。ホテルでは小さいフルーツなどを盛る皿なども作りますが、宴会場で婚礼や企業のパーティーなどの装飾として大型の氷彫刻をご注文いただくことも多いんです。

ただ今では大きな宴会も少なくなり、特殊な技術なので、これまでホテルで脈々と受け継がれてきた氷彫刻を、この先も伝承していくために、10年ほど前から部活動として希望者を募り、就業時間後「大阪新阪急ホテル」の厨房に集まって練習しています。弊社には氷彫刻コンクールでの受賞歴を持つスタッフが多数いるので、その指導の下、現在は月2回、他社にも門戸を広げて活動していて、西日本各地から参加者が集まるんですよ。

──ホテルの調理と氷彫刻の親和性は高いんですね! 氷彫刻の面白さはどんなところにあるのでしょうか?

そうですね。物体の形をデッサンに起こすところからはじまるので、日頃から魚や鳥を捌くなど、動物の骨格や関節を理解している調理スタッフは強いと思います。

自分は氷彫刻歴は浅いのですが、制作に入る前にしっかりデッサンの準備をしながらも、いざ掘り始めたら思い通りにはならない氷を相手にするので、もし「やってしまった! ピンチ!」となったときにも、どうリカバリーするかも面白い。「緻密な計算と心地の良いええ加減さ」そんな考え方で、氷彫刻を楽しんでいます。

──残念ながら、1月にホテルは閉館しますが、今後の活動はどうなるのでしょうか?

活動拠点にしていたこの厨房は使えなくなるので、グループの近隣ホテルに拠点を移し、今後も氷彫刻の活動を続ける予定で調整中です。部活動で使っていた備品や書籍などを片付け、少しずつ引っ越しの準備を進めているところです。

──最後に12月7日にアイスカービングショーを披露されますね。意気込みをお願いします!

世界レベルの腕前を持つスタッフも在籍する「氷彫刻制作クラブ」ですが、宴会場などクローズドな場所に作品を設置することが多く、今回のように制作風景含め一般のお客さまが誰でも気軽に見れるという機会はあまりありません。これまでホテルで受け継がれてきた技術を、お客様にお披露目できることがうれしいです。

当日は、重さ135キロの氷を6本使用し、これまでの感謝を込めた巨大な作品を作ります。スタッフひとりひとりが細かいパーツを複数制作し、最後にそれをひとつにつなぎ合わせていく作業も見どころ。大胆かつ繊細に、チェーンソーなどの電動工具や、ノミなどの手彫りも織り交ぜ制作しますので、ぜひその工程も楽しんでください。

最後に当日制作予定の氷彫刻の下絵を見せてもらったのだが、さすが世界レベルのみなさんがホテル閉館前に本気で挑戦する作品。このシーズンにピッタリのテーマながら、「本当にこんなものができるの!?」と驚くような複雑さ。今回はかなり巨大な作品になるため、安全性を考え、当日中に彫刻は壊してしまう予定だという。そんな「儚さ」も氷彫刻の魅力なのだろう。

60年間の感謝の気持ちを込めた『ICE CARVING SHOW TIME』は、12月7日「大阪新阪急ホテル」北玄関(ピロティ)にて開催(入場無料)。昼12時頃からカービングがスタートし、昼1時頃には約30分の解説やメンバー紹介もおこなわれる。作品完成は夕方5時頃を予定。その後は夜9時頃までライトアップ展示される。

(Lmaga.jp)

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