日本で17年ぶり…『アンドリュー・ワイエス展』が開催、初公開作品含む約100点が集結!幻想的な「境界」の世界とは?

アメリカの国民的画家アンドリュー・ワイエスの日本で17年ぶりとなる回顧展『アンドリュー・ワイエス展』が、10月3日から「あべのハルカス美術館」(大阪市阿倍野区)で開催中。会場には作品にちなんだドアや窓も施され、今回のテーマ「境界」の世界観へ誘われる。

■ 日本初公開の作品は15点戦後のアメリカ

前衛芸術とは距離を置き、故郷のペンシルヴェニア州と夏を過ごしたメイン州を拠点に、身近な人々や風景を描いたアンドリュー・ワイエス(1917-2009)。一見個人的な世界を描きつつも、対象に肉薄することで「生と死」「時間の移ろい」など、無常観と結びつく普遍的な作品を生み出し、日本にも多くのファンを持つ。

同展には、日本初公開15点を含む約100点の絵画が集結。5章のテーマごとに紹介され、特に窓や扉といったモチーフを通して「境界」に着目する。1・2章には、ワイエスが好んだ卵を顔料を使った作品が多く見られ、繊細かつ落ち着いたマット感が魅力。冒頭に飾られた『自画像』は、有名な挿絵画家だった父を事故で亡くした28歳の時に描かれ、画家としての強い意志が感じられるような険しい表情が印象的な1枚だ。

学芸員の浅川真紀さんが「よく鳥が描かれているので、その意味を考え、見る方が物語を紡いだり、見出してほしい」と話すとおり、写実的ながら幻想的な雰囲気が漂うのもワイエスならでは。白と黒の鳥が対照的な『マザー・アーチの教会』やワイエス夫妻の住居に今後の生活を予感させるような二羽のハトが飛ぶ『粉挽き場』といった、歴史ある地に鳥を描くことで「境界」をつなぐ役目としても考察できるそう。

そして、3章『ニューイングランドの家』は、約30年にわたって描き続けたメイン州にあるオルソン・ハウスとそこで暮らしていた姉弟・クリスティーナとアルヴァロが主役。その世界観へ誘われるよう、3章入口には、代表作『クリスティーナ・オルソン』を参考に「宝塚舞台」が手がけたドアが出迎え、家の解説パネルや模型とともにアメリカの原風景とも称されるオルソン・ハウスの作品を鑑賞できる。

病により脚が不自由だったクリスティーナが台所の勝手口に座る『クリスティーナ・オルソン』は、ワイエスがその気高い独立心を表現し、陽光と影のコントラストが秀逸な1枚。浅川さんは風になびく細やかな髪の影にも注目し、「室内に風が吹き込むことは、動きが生まれる『生命』の象徴でもあり、この展示室では間接的に風も感じてほしい」と、周りにはワイエスが強く絵心を刺激され、風になびくカーテンを描いた『海からの風』習作が展示されている。

続く4章には窓の装飾も登場し、そのモチーフとなった日本初公開『ヒトデ』は、5章最後の透明なカーテン奥に展示。こちらも「風」を感じられる仕掛けで、窓の奥に描かれた妻が双眼鏡を覗いていることで、その先へも想像が広がる印象。浅川さんは「『境界』は隔てるというネガティブな意味でなく、むしろ時間や空間をつなぐ大いなる循環の中で、今この瞬間を生きる命の輝きなどポジティブな意味合いにもとれるのでは」と話す。

そして、「ワイエスは写実的ながら、表面の奥にある真理まで表現しているので、『みえるもの』『みえないもの』どちらも描ける画家」と分析。たしかに全体を通して、『ブルーベリーのバケツ』『洗濯物』など、人は描かれていないものの、物を丹念に描くことで営みが見え、オルソン家住人亡き後の家の描写からは、人や土地の歴史・時の流れを想起させるなど、「不在の中の存在」を際立たせる、唯一無二の世界観となっている。

◇

『アンドリュー・ワイエス展』

【期間】2026年10月3日(土)~12月6日(日)

【会場】あべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16F)

【時間】10:00~20:00(月・土・日・祝日10:00~18:00 ※入館は閉館30分前まで)

【料金】一般2200円、大高生1800円、中小生500円

※会期中、一部展示替えあり

取材・文・写真/塩屋薫

(Lmaga.jp)

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