「ダイヤモンドバックス５ー６エンゼルス」（１１日、フェニックス）

　エンゼルスの大谷翔平投手（２６）が「２番・投手」で今季６度目の投打同時出場。投手としては５登板ぶりに１６０キロ台をマークするなど、５回５安打２失点、与四死球３、奪三振８。日米初となる１試合２ボークを記録し、困惑の表情を見せた。３勝目の権利をもって降板し、六回は右翼の守備に入った。打撃では２本の二塁打を放って４打数２安打１打点。今季１７度目のマルチ安打で打率を・２６７とした。自身の３勝目はならなかったが、チームは延長戦を制して今季初めて４連勝を飾った。

　ＤＨ制のないナ・リーグ球団との交流戦。メジャー史上初めて先発投手でナ・リーグの球場で４番以上の打順に入った選手となった大谷は初回のマウンドで１死からスプリットで２者連続空振り三振に仕留めて三者凡退。全１１球ボールなしという上々の立ち上がりを見せた。

　二回は１死から５番スミスに左中間二塁打を打たれるも後続をピシャリ。２イニング２５球の内訳は直球１９球、スプリット６球。スライダーやカーブを封印する配球で無失点に抑えた。

　苦痛で顔をゆがめたのは三回の打席だ。自打球が右膝を直撃し、「あーっ！」と声を上げた。ベンチから水原通訳とともに飛び出したトレーナーにズボンの裾をめくり上げて状態を説明。軽く走って状態を確認した後、打席に入ると敵地ファンから拍手と歓声が上がった。

　これで終わらないのが大谷だ。カウント２－２から内角１５０キロカットボールをとらえると、打球は右中間を真っ二つ。一塁走者アップトンを生還させ、自身は足を引きずりながら二塁へ。３番レンドンの中前打で痛みに耐えながらホームを踏んだ。

　自打球の後遺症が心配されたのは３点リードの三回のマウンドだ。１死から投手ケリーにストレートの四球を与え、１番ロハスの三塁内野安打でピンチを広げる。

　続くマルテを遊ゴロに打ち取りって２死二、三塁。ここで二刀流がギアを上げる。カブレラへの初球、外角高めにはずれた直球は１００マイル（約１６１キロ）を計測。５月５日のレイズ戦で四回に計測して以来、５登板ぶりとなる大台をたたき出すと、その後も１５８キロ、１５６キロ、１５８キロの剛球を投じてカウント２－２とし、最後は１５８キロ直球で空振り三振を奪って失点を許さなかった。

　四回にも粘りの投球を見せた。先頭エスコバーが、エンゼルス内野陣がシフトを敷いてがら空きになった三塁前へバン安打。大谷はマウンドを駆け降り、打球処理に走ったが、送球はできなかった。１死一塁から落ちないスプリットを中越え二塁打。１死二、三塁となったが、７番Ｃ・ケリーを１５８キロ直球で、続くアーメドをこの２球目のスライダーで連続空振り三振斬り。マウンド上で右こぶしを握って雄叫びを上げた。

　何度も困惑の表情を見せたのは五回だ。四死球などで２死一、二塁の場面。大谷が二塁へけん制モーションに入ったところでボークを取られた。メジャー初、日本では１４年に一度だけ記録した珍しいプレー。大谷は苦笑いを浮かべて、審判に向かって両手を広げて「なぜ？」のポーズを取り、説明を求めたが、判定は覆らず。さらにカウント２－２からの投球モーションもボークと判定されて、三塁走者が生還。５球目、空振り三振を奪ったスプリットが暴投になり、２点目を失った。

　五回を終わって８６球。ここでマドン監督が奇策に出る。七回の攻撃で大谷に打順が回ってくることから六回の守備でダブルスイッチを使い、大谷を右翼へ、右翼ウォードの打順にリリーフ投手を入れた。ところが、２番手ロドリゲスが２失点で同点にされ、大谷の３勝目が消えた。

　相手に傾きかけた流れ。今季４度目の外野を守った大谷がチームを危機から救う。七回無死一塁。初球カーブに快音を響かせる。右中間を深々と破る二塁打で無死二、三塁と好機拡大。暴投で三塁走者アップトンが勝ち越しのホームを踏んだ。ここで大谷はお役御免。指揮官はラガレスを中堅で起用し、二刀流をベンチに下げた。

　エンゼルスは１点リードの九回２死走者なしから抑えのイグレシアスがまさかの同点被弾。しかし、タイブレーク制の延長十回にボークと２死球で１死満塁とし、内野ゴロで勝ち越し点を挙げて辛勝した。