【野球】阪神・佐藤輝の初4番満塁弾に鮮烈のGWデビューした黒船ホーナーを思う

 阪神のゴールデンルーキー・佐藤輝明内野手(22)が5月2日の広島戦(甲子園)で鮮烈の初4番アーチを放った。このゴールデンウイークの満塁弾に、“黒船”、“赤鬼”と呼ばれた外国人選手がいたことを思い出した。1987年にヤクルトでプレーした“黒船”ボブ・ホーナーだ。

 彼は、78年のMLBドラフト全体1位でアトランタ・ブレーブスに指名され、その年の新人王を獲得。79、80年には連続30本塁打以上で、ヤクルト入団の前年86年は27本塁打、87打点を記録した現役メジャーリーガーだった。86年のシーズン後FAになったが、各球団のオーナーがFA選手の年俸高騰を嫌い、どの球団とも契約できずに来日した。

 虎党は思い出したくないだろうが、衝撃のデビューは5月5日の阪神戦だった。来日3打席目で、仲田幸司(56)から初本塁打。翌6日には池田親興(61)から3本塁打し、メジャー4番の実力をみせつけた。

 その打撃のすさまじさを目の当たりにしたのは5月9日、長崎県佐世保で行われた広島戦だった。佐世保工高出身で、凱旋(がいせん)登板となった白武佳久から2本塁打を放った。

 その時の打撃フォームはフルスイングではなく、まるでゴルフのパンチショットだった。だが、打球はピンポン球のように飛んだ。野球とベースボールの違いを思い知らされた気がした打撃だった。試合後、白武が「ボールがつぶれたかと思ったよ」といった言葉がすべてを物語っていた。

 個人記録よりも、勝利にこだわる態度もメジャーリーガーだった。9日は試合に負けたため会見を拒否。だが、翌10日に長崎で行われた試合では長冨浩志、川端順の両投手から三振を喫し、内野安打1本に終わった。だが、チームの勝利に上機嫌でインタビューに応じた。それに加え、試合後には宿舎内でヤクルト担当の先輩記者が無理を承知でお願いした単独インタビューも受けてくれた。

 私は広島担当だったが、先輩記者のメモ係として同席させてもらった。淡々とした口調で、芯を外せば確実に折れる、わずか900グラム足らずのバットを使っているなどと話していたように記憶している。もの静かな紳士という印象だった。

 もう時効だろう。そのホーナーと一度だけ酒席を共にしたことがある。7月4日に福島あずま球場で行われる予定になっていたヤクルト-広島戦の前夜だった。記者仲間と福島の街をうろついていたところ、ホーナーらヤクルト、広島両チームの外国人選手に遭遇。当時、ヤクルトの選手だったレオン・リーに「せっかくだからお前たちも一緒に来い」と、生バンドがいる店に誘われた。ホーナーと何を話したか、まったく覚えていないが、帰り際に、レオン・リーから「今日のことは内緒だよ」とくぎを刺された記憶だけはある。

 ホーナーは故障の影響で93試合に出場。打率・327、31本塁打、73打点の成績を残してわずか1年で日本を去った。だが、強烈な“黒船フィーバー”は、今も色あせることはない。=敬称略=(デイリースポーツ・今野良彦)

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