【芸能】音楽フェスを未来へつなげ! 野外ミュージックフェスコンソーシアム(後)

 現在のフェス状況は、1997年に第1回のフジロックが開催されたことから実質的に始まった。今や全国でフェスが根付き、地域における文化の発展や雇用の創出など、フェスという枠を超えて地方創生には欠かせない役割を担っている。

 近藤氏は「コンソーシアムを始めたことで資料を作ることができてきた。将来の予測も立てていけるので、ある程度まとめた形でしかるべきところに発表していく必要があると思います。今後の活動としては、世の中にちゃんと理解してもらうという(ことを)やっていくべきかなと思います」と、啓発の必要性も感じている。

 「やっていることでそういうこと(経済が回る)も起こる。フェスが社会を作り、文化を作っているということを僕たちが自覚していくべきかなと思っていて、それを世間の人にも理解してもらいたい。フェスを作るのは主催者、出演者、制作者、お客さんだけじゃなくて、周りの人たちとか、関わっている人たちが膨大にいることを理解していただきたいっていうか。自分たちも自覚、責任を持って活動していくのは有意義かなと思います」

 今年もフェスの中止が相次ぐ現状に、近藤氏は「コンソーシアムの中では共通の課題として今まで以上に考えざるを得ない。コンソーシアムを作ったおかげで本来であればあまり聞かない情報を事前にもらって、互いに考えたりというのがひんぱんに起こるのが、去年から今年にかけての特殊な事情ですかね。今までだったらそれぞれフェスで悩み、課題を抱えてやってましたけど、去年今年はちょっと違ってきたという印象はあります」

 各フェスの事情を見ると、今年のフジロック開催にあたって、石飛氏は観客数をキャパシティーの半分以下にすること、相部屋宿泊の取りやめなどの他、「今までと比べるとさらに不自由なフジロックになるのかなと思います」として「場内禁煙で喫煙所のみ可」、「アルコールの持ち込み一切禁止」、「アルコール販売時間短縮」などの施策を挙げた。

 また、通常の緊急時用連絡会議の他に、湯沢町の音頭で「コロナ感染拡大防止対策会議」を立ち上げた。地元では開催を望む声が大多数だといい、「どうしても観光立町で、皆さん困窮されていて、せめてフジロック4日間頑張れという声ですね。その分、しっかり対策やってくれないと困るという声も聞こえてきます」と、地域の事情を説明する。

 SWEET LOVE SHOWERを共催する山梨県山中湖村も同様で「村としては何とかして実施をしたい」(近藤氏)と望んでいるといい、スペースシャワーでは「役場の人とも協力しながら、県との話し合いも進めております。県、村とも前向きに、感染対策を管理する側としての助言もいただきながら進めています」と、自治体と連携して準備を進めている。

 「何より感染対策がきっちりしていないと。お客さんがそのことに自覚的であってもらえるように誘わなくてはいけない」と観客の啓発にも注力。近藤氏は「お客さんは本当に協力的に、自分たちもライブを作っているくらいな気持ちでいらっしゃるので。フェス、村の人たち、周囲の人たちも含めて共通の理解を持って進めていって、皆で喜んでもらえるようなものにしたい」と、観客や地元への信頼を口にした。

 近藤氏は「決して不要不急のことをやっているのではなくて、社会的にも経済的にも文化的にも非常に意義がある。フェスというものを通じて文化を育んできている」とフェスの意義を訴える。

 「定期的に各地で開催されることで、それぞれの地方の特長を生かしながら、地方創生に貢献していると言うよりは、みんなで作っている。主催者、土地土地の人たち、観客、アーティストが育んで、年に1回突然現れる社会を毎年作ってきて、それが何か新しいものを生んでいるということを、ぜひ皆さんに感じてほしい。イベントだけが窮地に陥っているわけじゃなくて、そのイベントで成り立っていた町とか村とか、そういうところも窮地に陥っているわけで、そういうところを助けてほしい」と呼びかけていた。(終わり)

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