【競馬】菊花賞制覇へ 三者三様の思いとともに挑むアリーヴォ

 今週末には、クラシック最終戦となる菊花賞が行われる。今年は京都競馬場が改修工事のため、1979年以来、42年ぶりに阪神競馬場で開催。そんな中で、個人的に注目している馬がいる。条件戦を連勝してきたアリーヴォだ。

 今夏に急死したドゥラメンテの産駒で、母は14年関東オークス覇者のエスメラルディーナ。血統的な適性はともかく、走るフォームが長距離向きだと考えている。頭をある程度の高さで一定に保ち、後肢で力強く地面を蹴って、しっかりと推進力を前に伝えられている。走りに無駄がない分、消耗も少ない。長距離戦攻略には、必要な要素の一つだろう。

 栗東・杉山晴紀厩舎で同馬を担当する房野助手に聞くと、「体幹のコントロール」を意識して調整してきたという。疲れると崩れやすいフォームを固めるため、普段の乗り運動から全身を使わせて丹念に鍛え上げた。「競馬よりしんどいことを普段の調教でしてきました。バランス良く筋肉がついてきましたね」。ブレのない走りは、馬に適したフォームで走れる体づくりによって培われた。

 「操縦性に関しては、誰が乗っても乗りやすいと言ってくれます。長い距離だからゆったりと走らせないと、とよく言われますが、個人的には三千を最後まで一生懸命走れるかが大事だと思っていますし、それができる馬だと思っていますよ」

 かつて、福島信晴厩舎時代に08年菊花賞3着のナムラクレセントを担当。同馬が初めて重賞を制したのが、今回と同じ阪神芝3000メートルで行われた11年の阪神大賞典だった。「阪神三千に思い入れのある男なので」と笑っていたが、10年の時を経て、同じ舞台でG1タイトルを手にする可能性は十分とみている。

 思い入れなら、急死した父ドゥラメンテの主戦だったM・デムーロ騎手(42)=栗東・フリー=も同じだろう。「ドゥラメンテの子でいい結果を出したいです。同じくらい走ってくれたら、うれしい。ドゥラメンテはダービーの後、ケガをして菊花賞に出られなかった。リベンジしたい」と力強い。レースでの騎乗は初となるが、調教で感触を確かめ、「状態はいいと思う。乗りやすい。スタミナもある」と色気を持っている。

 指揮官の杉山晴師も、菊花賞とは浅からぬ縁がある。助手時代に担当馬で初めてG1を勝ったのが、09年覇者スリーロールス。学生時代に自身を競馬の世界に導くきっかけとなった馬も、同馬の父で96年にこのレースを制したダンスインザダークだった。

 「菊花賞だから特別というわけではないですが、この世界で仕事をしていて、G1に出られるというのはうれしいことですよね。スリーロールスも条件戦からチャレンジして勝つことができました。距離はやってみないと分かりませんが、引っ掛かる馬じゃないし、折り合いも大丈夫ですから。チャンスがあると思っていますよ」

 三者三様の思いを胸に秘め、臨む大一番。G1馬不在で混戦ムードが漂うだけに、一気にタイトル奪取のシーンがあっても驚けない。昨年はコントレイルの3冠達成に沸いたクラシック最終戦だが、今年はまた違った熱い戦いを楽しみにしたい。(デイリースポーツ・大西修平)

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