【野球】1992年のヤクルトVで喜ぶ池山に世界の王の影があった

 今年のヤクルトには、どんな隠れたサポート役がいるのだろうか。そう思うのは、1992年のヤクルト優勝ではしゃぐ池山隆寛(55)=現ヤクルト2軍監督=の姿に、世界の王の影があったからだ。

 セ・リーグではヤクルト、阪神が一歩も引かない戦いを繰り広げている。私がヤクルトを担当していた92年もヤクルトと阪神が優勝争いを演じていた。結局、甲子園でヤクルトが阪神に5-2で勝ち、14年ぶり2度目のペナントをもぎ取った。

 野手陣でチームを引っ張ったのがMVPに輝いたジャック・ハウエルと池山、古田敦也らだった。ハウエルは後半だけで30本以上の本塁打を放ち、本塁打王と首位打者にも輝いた。だが、池山も5年連続30本塁打を記録し2年ぶり4度目のベストナイン、初のゴールデングラブ賞も獲得。攻守ともにチームを引っ張った存在だった。

 この年、豪快なスイングで“ブンブン丸”と呼ばれた池山は米ユマキャンプ、宮崎・西都キャンプを通じて、野村克也監督(故人)の指導を受け、ファーム改造に挑戦していた。その結果、打率もキャリア2番目の・279を記録したシーズンだった。

 野村監督の指導もさることながら、フォーム改造の背中を押したのは、“世界の王”こと王貞治さん(現ソフトバンク会長)の打撃指導だったと思う。

 池山が当時評論家だった王さんに特別指導を受けたのは、92年2月25日の西都キャンプでのことだった。キャンプ地を視察に訪れた王さんに、野村監督が「あいつは、フォームを改造中。ちょっとみてくれ」と要請し直接指導が実現したのだ。

 王さんは池山の打撃をチェックし「確かにフォームは小さくなったかもしれないが、シンに当たれば飛距離は変わらない。これでいいんだ」と高評価を与えただけではない。

 さらに(1)右手はムチのように使え(2)振り幅は小さく(3)バットは指で握り、わきで持つような感じにしろ(4)自分のタイミングで足を上げろ(5)バットは状況に応じて短く持て-の5項目からなる三冠打法の奥義まで伝授した。

 パ・リーグの三冠王経験者・野村監督とセ・リーグの三冠王経験者・王さんから同時に指導を受けるというのは、まさに前代未聞の出来事だろう。

 池山本人も「今まではこれでいいのだろうかという不安もあった。でも、これで自信がつきました。あとは実戦でどう対応できるか」と言葉を弾ませていたのを覚えている。

 結局この年、打撃タイトルは獲得することはできなかった。だが、胴上げの輪の中で、また優勝祝賀会で大騒ぎする池山にとって、王さんのアドバイスは無駄ではなかったはずである。

 今季、ヤクルトが優勝した場合、どんな人間のサポートがあったのか。それを知るのも楽しみである。=敬称略=(デイリースポーツ・今野良彦)

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