【芸能】角川映画祭で挑戦の歴史を振り返る 「犬神家の一族」4K修復版も初公開

 角川映画が「犬神家の一族」(1976年)で産声を上げてから45周年となる今年、11月19日に「角川映画祭」が開幕し、東京・テアトル新宿などで上映される。日本映画界を大きく変えた角川映画の歴史的意義や、今回の目玉である「犬神家の一族」の4Kデジタル修復版など本映画祭の見どころについて、開催や作品選定に携わったKADOKAWAの担当者に聞いた。

 出版の角川書店という異業種からの参入ながら、「犬神家の一族」、「人間の証明」(77年)、「野性の証明」(78年)と立て続けに大作をヒットさせ、日本映画の常識を打ち破った角川映画。

 当時の邦画は黄金期をとうに過ぎて、大映の倒産(71年)に象徴される斜陽産業となり、日活が一般映画からロマンポルノにかじを切る(71年)など、変革を迫られていた時期。映画人口はピークだった58年の11億2745万人から、「犬神家の一族」の公開前年、75年には1億7402万人と大きく落ち込んでいた。

 そんな中、76年に登場し、「現在では当たり前のように行われているが当時は画期的だった」(担当者)方法で日本映画を変革したのが角川映画だった。具体的には映画、出版(単行本、文庫、雑誌)、音楽(主題歌)、テレビCMなどの「大規模なメディアミックス展開」や、薬師丸ひろ子、原田知世、渡辺典子ら、自らオーディションで発掘しマネジメントした「スクリーンでしか会えないアイドル」(実際にはテレビドラマ出演などもあったが)などだ。

 市川崑、深作欣二らベテランから相米慎二、森田芳光ら新進気鋭、イラストレーターの和田誠や漫画家の大友克洋ら異業種までの監督をはじめとした「一流のクリエーターたちを起用したことも、現在の日本映画界に大きな影響を与えているように思います」と担当者は指摘する。

 角川映画40周年を記念して2016年に開催された前回は「昭和」という時代で区切り、76年の「犬神家の一族」から88年の「ぼくらの七日間戦争」までをラインアップ。「いわゆる『角川映画』世代のお客さまが大変多く来てくださり、とても多くのお客さまに喜んでいただきました」(担当者)と、反響は上々だったという。

 今回は「復活の日」、「蘇える金狼」など、前回も上映された昭和の角川映画の代表作24本に加え、平成の「ファイブスター物語」(89年)、「天と地と」(90年)、「天河伝説殺人事件」(91年)、「黒い家」(99年)、前回は上映されなかった「ボビーに首ったけ」(85年)、「迷宮物語」(86年)を上映。今年8月に死去した千葉真一さん主演の「戦国自衛隊」(79年)も特別上映される。

 中でも目玉と言えるのが第1作「犬神家の一族」の4Kデジタル修復版だ。

 試写では「表情がくっきり映っているので、表情の演技がとてもよく分かる」、「セリフが聞き取りやすくて、昔の言葉遣いでもはっきり何をしゃべっているか分かる」、「犬神佐兵衛(三國連太郎)の体毛がフサフサしているのもよく見える」、「犬神佐清(あおい輝彦)の胸毛がチラッと見える」、「肌が透き通って、島田陽子の美しさがヤバいほど感じられる」、「逆さ足のシーンのバックの自然がより一層美しかった」といった声が上がっている。

 担当者は「映像がクリアになったことにより、公開当時に監督が意図していた映像に少しでも近づけたのではないか」と自信を見せていた。

 角川映画の挑戦をスクリーンでたどり直せる、またとない機会が訪れる。(デイリースポーツ・藤澤浩之)

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