【野球】広島の急失速止めた常広羽也斗 ドラ1ルーキーが示した無限の可能性とは 首脳陣も驚く「投手にとって大事なところ」

 広島のドラフト1位・常広羽也斗投手(23)が15日・DeNA戦で5回7安打1失点の好投。球団では17年の矢崎拓也以来、13人目のプロ初登板初先発初勝利を成し遂げた。チームの連敗を6で止めたマウンドで、黄金ルーキーが見せた高いポテンシャルと、今後の伸びしろについて迫った。

 新人とは思えない堂々の92球だった。チームは6年ぶりの優勝を目指す中、9月戦線でまさかの大失速。今季ワーストの6連敗で迎えた本拠地でのプロ初登板で、常広が救世主となった。

 三者凡退は一度もなかった。それでも失点は三回の内野ゴロ間の1点のみ。捕手の坂倉とは「基本的にはどんどん直球で押して、ゾーン内で勝負しようと話していました」とリーグ屈指の破壊力を誇るDeNA打線に対し、臆することなく腕を振った。

 菊地原毅投手コーチ(49)が注目したのは新人らしからぬ強心臓ぶりだ。「連敗の中、本人も少なからずプレッシャーは感じていたと思う。でもバタバタするそぶりを見せず堂々と投げ切れていた。大学時代から大舞台には慣れているのもあって気持ちが強い子だなと。投手にとって大事なところ」。マウンド上での立ち振る舞いはもちろん、メンタルの強さに驚いた様子だった。

 そんな常広らしさが表れた場面があった。五回2死満塁をしのぎベンチへ。すると、すぐさまヘルメットをかぶり、8番から始まる攻撃に向け準備を進めた。新井監督から直接交代を伝えられると、ようやく着席。「終わりと言われるまでいかないといけないので、準備してました」。右腕にとっては当たり前の備えだったのかもしれない。それでも菊地原コーチは「動じないなと。そういう姿勢も評価できる」と心意気を認めた。

 一方で、同コーチが伸びしろと感じたのは新しく習得したカットボールだ。「今年から本格的に投げ出した状況で、試合でも使えていた」と一定の評価を与えた上で、「でもまだ完成形じゃない。少しスライダー気味になっていたので、もう少しスピードと回転数を上げようというのは伝えた」と課題を与えた。

 最速155キロの直球と鋭く落ちるフォークを武器とする右腕にとって、カットボールは選択肢を広める球種となっている。「直球がだめなときにカットボールを使えるようになったのはいい。打ち取れたりもしたので」。しかし、本人も「まだまだ改良しないといけない」と納得はしておらず“完全習得”を目指し、練習を続けている。

 「彼の長いプロ野球人生で1年目がこれでよかったと言えるように」とエールを送った菊地原コーチ。ルーキーらしからぬ落ち着きぶりと、無限の可能性を示した初勝利となった。(デイリースポーツ・高橋涼太朗)

 ◇常広 羽也斗(つねひろ・はやと)2001年9月18日生まれ、23歳。大分県出身。180センチ、77キロ。右投げ右打ち。投手。大分舞鶴、青学大を経て23年度ドラフト1位で広島入団。150キロ超の直球が魅力。プロ入り後、カットボールを覚えるなど努力を重ねた。24年9月15日・DeNA戦でプロ初登板初先発初勝利。

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