【スポーツ】派手なだけじゃない、青学大・原晋監督の手腕が詰まった数分間 往路V後、震える若林を即座に介抱 周囲にも呼びかけ「ドリンクない?」

 第101回東京箱根間駅伝が終了した。青学大は往路で2連覇を果たすと、復路は1度も首位を譲ることなく、10時間41分20秒の大会新記録で2年連続8度目の総合優勝を飾った。原晋監督(57)が掲げた「あいたいね大作戦」は「300パーセント」の大成功を収め、11年間で驚異のV8となった。

 原監督と言えば駅伝に向けた大作戦名や、テレビ出演など派手なイメージがあるだろう。過去の箱根駅伝優勝後は、ポケットマネーで4年生にハワイ旅行をプレゼント。サラリーマン時代に培った「伝説の営業マン」としての手腕を生かし、業界へのさまざまな鋭い指摘を行い、メディア対応にもたけている。

 派手な一面を見せながら、裏側では泥くさく努力を重ねる選手への配慮を欠かさない。指揮官の手腕が詰まったワンシーンがある。

 往路優勝後しばらくして、チームは芦ノ湖駐車場に特設された舞台で優勝インタビューに応じ、駐車場を埋め尽くす大勢の関係者やファンに祝福された。舞台裏に戻ると、今度は監督と選手一人一人がテレビのインタビューに対応。ペン記者も周囲で見守っていた。

 その傍らで順番を待っていた若林宏樹(4年)が息を荒らげて椅子でうなだれていた。激しい山上りで区間新を出した直後、無理もないことだった。ただ、体を酷使する陸上レースの後ではよく見かける光景でもあり、その場では大事にはなっていなかった。

 最初に原監督が取材を終え、しばらくしてから近くの学生を呼んだ。「ドリンクない?若林に」。教え子の異変にすぐに気がついていた。ペン記者の取材にも待ったをかけ、若林の元へ駆け寄り、ドリンクやあめを渡して気遣った。若林の手は少し震えており、優勝インタビューの時よりも顔色も悪くなっていたようだった。

 1区の選手から続いていたテレビ取材は5区の若林にたどり着こうとしていた。原監督は間に入って取材に応じられるか尋ねた。「だめならだめでいい」。簡潔な言葉に、若林は「ちょっと無理です。震える」と短い言葉で返答した。若林は選手たちに運ばれてすぐそばにあった控えのテントに入っていった。

 幸い、15分ほどして若林は回復した表情でテントから出てきた。表彰式に向かうと、再び祝福の拍手を浴びた。一歩間違えれば大事に至っていたかもしれない。少しの変化を見逃さない原監督の名将ぶりを垣間見た数分間だった。

(デイリースポーツ・田中亜実)

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